OpenID Foundation Australian Digital Trust CG 活動レポート (2025年11月)
執筆日: 2026-04-22(遡及執筆)
1. 概要
Australian Digital Trust Community Group(ADT CG)は、オーストラリアにおけるデジタルアイデンティティの普及と相互運用性の向上を目的として、OpenID Foundation 傘下で活動するコミュニティグループである。チェアは Dima Postnikov、Victoria Richardson、Dave Hyland、Brad Carr、Olaf Grewe の5名が務める。
2025年11月は定例 CG ミーティングを2回(11月3日・11月17日)、SIDI Trust Framework Analysis サブグループのミーティングを1回(11月10日)開催した。また11月24日にサブグループ定例が予定されており HackMD にアジェンダテンプレートが作成されたが、出席者・議事録欄は空白のままであり、開催の有無および内容は確認できなかった。
主な活動トピックは、オーストラリアのソーシャルメディア年齢制限法の12月10日施行に向けた年齢確認(Age Assurance)政策議論・OIDF 声明草案の準備、SIDI Trust Framework Analysis サブグループによる ACTIS アカウントクロージャールールと ConnectID のマッピング作業、FAPI 2.0 を CDR に適用するための政府コンサルテーション動向の追跡、そして DSAC(デジタルアイデンティティ標準諮問委員会)への代表派遣の検討であった。
2. 公開された仕様・ドラフト改訂
11月中に ADT CG 自身が発行・改訂した仕様ドラフトは確認されなかった。
CG として注目された関連動向として以下が言及された。
- FAPI 2.0 / CDR 公開コンサルテーション(予告): 10月23日に Treasury/Data Standards Body が Ian Opperman、Naomi Gilbert の登壇で開催したワークショップにおいて、CDR を FAPI 2.0 に移行するための公開コンサルテーションが11月に実施予定と示唆された(11月3日ミーティングで John Scullen が報告)。
- OIDF メンバー投票(12月以降): OpenID4VC HAIP 1.0 および Authorization API 1.0 の投票が12月以降に予定されており、CG 参加者への事前周知が行われていた。
3. ミーティングと議論
11月3日(月)— ADT CG 定例ミーティング
- 形式: Zoom、17:00–18:00 AEDT
- 議長: Dima Postnikov
- 議事録: Dave Hyland
- 参加者(8名): Dima Postnikov、Derek Munneke、John Scullen、Dave Hyland、Linden Dawson、Jacob Oberman、Stefan Charsley、Kate Virgona
OIDF Slack 参加方式の明確化
OIDF Slack への参加に参加同意書(Participation Agreement)の署名が不要であることが確認・周知された。OIDF Board は、IP(知的財産)を含む情報を Slack ではデフォルトで共有しないとする方針を採択しており、この決定を踏まえて、新規参加者が同意書なしに Slack に参加できることが改めて案内された。
年齢確認(Age Assurance)立法の監視
12月10日施行予定のオーストラリアのソーシャルメディア年齢制限法(16歳未満のアカウント開設を遅延させる措置)について議論された。Stefan Charsley は「これは利用禁止ではなく、アカウント開設の遅延措置であり、ペナルティは個人・保護者ではなくプラットフォーム側に課される」と整理し、12月10日のソフトローンチ後の施行状況をモニタリングすることが提案された。また Jacob Oberman が年齢確認(Age Assurance)の専用サブグループミーティングを水曜17:00に設定することを確認した。
ConnectID によるトラストフレームワークマッピング
SIDI Trust Framework Analysis サブグループが取り組む AGDIS(Australian Government Digital Identity System)の分析ワークブックについて、ConnectID の担当者を招いて未完成部分を補完することが提案された。Dima Postnikov が Rick Iverson に対して ConnectID のフレームワークマッピング作業の引き継ぎを依頼するアクションアイテムが設定された。
FAPI 2.0 / CDR コンサルテーション動向
John Scullen が10月23日の Treasury / Data Standards Body ワークショップを報告した。Ian Opperman と Naomi Gilbert の発言から、CDR を FAPI 2.0 に移行するための公開コンサルテーションが11月中に行われる見込みであることが共有された。
地域イベントの確認
- Biometrics Institute Showcase Australia(11月26日、キャンベラ/オンライン)
- IDPro Meetup Canberra(11月26日、会場未定)
- ADT Roundtable Sydney(12月3日、会場未定)
11月10日(月)— SIDI Trust Framework Analysis サブグループ
- 形式: Zoom、17:00–18:00(隔週月曜)
- 参加者(9名): Stefan Charsley、Jo Spencer、Olaf Grewe、Linden Dawson、Derek Munneke、Dave Hyland、Victoria Richardson、Eric Jiang、David Moore
このサブグループは、「Survey on Trust Framework Policy Characteristics」および「Digital ID DNA – Interoperability Across Trust Frameworks」レポートを基盤として、オーストラリアの Digital ID フレームワークを eIDAS 2.0(EU)、NIST 800-63(米国)、UK DIATF、Canada DIACC、Singpass(シンガポール)、BankID(スウェーデン)と比較し、クロスボーダー相互運用性を整備することを目的としている。11月時点では日本のデジタルアイデンティティ標準へのマッピングが進行中であった。
ACTIS アカウントクロージャーに関する議論
オーストラリアの ACTIS(Australian Consumer Trust and Identity System)における口座解約ルール、重複排除手続き(deduplication procedures)、報告義務、苦情対応手続きについて詳細な議論が行われた。特に「銀行口座が凍結された場合にアイデンティティサービスはどうなるのか」という論点が浮上し、Olaf Grewe のチームが ConnectID の対応方針を確認するアクションが設定された。Dave Hyland は Dima Postnikov への質問事項を整理してアジェンダに追加することとなった。
OIDF 年齢確認声明の草案作成
年齢確認に関して OIDF として原則声明またはブログ投稿を発表すべきかが議題に上がった。Victoria Richardson が Gail(OIDF の担当者)に意見を確認した上で、OIDF の原則に沿った年齢確認の声明草案を火曜日までに作成することとなった。Dave Hyland と Victoria Richardson は翌水曜日にこの対応方針を詰めることとなった。
比較作業のナラティブ化
Dave Hyland が、各フレームワーク比較の作業経緯をストーリーとして統合する「プレイバック(playback)」を作成し、より広い比較ナレーションとして仕上げるアクションアイテムを担当した。また Olaf Grewe は DMP(Digital Media Passport)ユースケースへの Jan の見解を収集することとなった。
次回: 2025年11月24日(月)
11月17日(月)— ADT CG 定例ミーティング
- 形式: Zoom、17:00–18:00 AEDT
- 議長: Victoria Richardson
- 議事録: Dave Hyland
- 参加者(11名): Dave Hyland、Victoria Richardson、John Scullen、Linden Dawson、Andres Olave、Hamang Rathod(新規)、Jacob Oberman、Olaf Grewe、David Moore、Derek Munneke、Jo Spencer
新規参加者の紹介
Hamang Rathod が初参加し、自己紹介と現在の役割を共有した。
エコシステム分析の進捗(Dave Hyland)
Dave Hyland がトラストフレームワーク比較分析の現状を説明し、これまでの作業から洞察を引き出し、ユースケースに適用するための次のステップが提示された。具体的な内容の議論は次回以降に持ち越された。
DSAC 代表派遣の検討
Olaf Grewe が ADT CG メンバーに DSAC(Digital Standards Advisory Committee / 正式名称は文脈上の推定)への代表参加の意向を確認した。Hamang Rathod と Victoria Richardson がいずれも DSAC 代表は良いアイデアだと賛同を表明した。Olaf はクリスマス休暇前に Board レポートを提出することとなった。
年齢確認ブログ投稿の執筆
Victoria Richardson が、Age Assurance Czech との業界朝食会で得た知見・各種年齢確認オプションの比較・データ最小化の原則をまとめた OIDF 向けブログ投稿の初稿を、翌水曜日の Age Assurance サブグループミーティングまでに作成することとなった。
IDPro Canberra ミートアップ(11月26日)
Olaf Grewe が11月26日のミートアップで SailPoint が発表を行うと案内した。参加登録用リンクを Slack と LinkedIn で配信する予定(会場は Olaf が調整中で ~38名規模を想定)。
TOIP 5周年シンポジウム(11月19–20日)
Trust Over IP の5周年記念シンポジウムがオンラインで11月19–20日に開催予定であることが John Scullen から紹介された。オーストラリア時間で深夜2時と厳しい時間帯であることが言及された。
DADE サブグループの解散
ADT CG 内の DADE(Death and the Digital Estate)サブグループはグローバルな OpenID DADE グループへ移行するため解散した。Digital Estate Planning Guide のパブリックコメント期間は10月24日に終了していた。
Innovation Day の日程調整
Victoria Richardson が2026年2月の Innovation Day に向けた Doodle 投票を作成することとなった。
4. メーリングリストの主要スレッド
openid-au-digital-trust アーカイブ 2025年11月には4件のメッセージが投稿されたが、すべて David Hyland によるミーティングアジェンダの配信であり、技術的な議論を含む複数返信スレッドは発生しなかった。
| 日付 (UTC) | 件名 | 内容 |
|---|---|---|
| Nov 2(日) | Meeting agenda for ADT CG 3 November 2025 | 11月3日定例の HackMD アジェンダリンク配信 |
| Nov 17(月) | ADT CG - Todays Agenda | 11月17日定例の HackMD アジェンダリンク配信 |
| Nov 23(日) | Trustframeworks Subgroup | 11月24日 TFA サブグループの HackMD リンク |
| Nov 30(日) | ADT CG - Agenda | 12月1日定例の HackMD アジェンダリンク配信 |
ADT CG の ML は技術議論の場というよりもミーティングアジェンダの事前配信チャンネルとして機能しており、技術的な議論はミーティング中のリアルタイム対話および HackMD の議事録が中心となっている。
5. GitHub 上の議論
openid/cg-australian-digital-trust リポジトリの11月の活動は、会議録コミットに加え、PR のマージとリポジトリ整備の一括コミットが行われた。
openid/cg-australian-digital-trust#7 — update(AgeAssertion): move resources to own folder
nextalias が7月9日に開いた PR が、11月5日に Victoria Richardson(VictoriaJaneR)によってマージされた。Age Assurance 関連のリソースファイル(PDF 等6件)を、Trust Framework Analysis サブグループ向け PR #6 と同様の構造に揃えて AgeAssertion/resources/ サブフォルダへ移動するもの。nextalias が8月と11月に「bump」コメントを投稿した後にマージに至った。
2025年11月2日の一括コミット(Dave Hyland)
Dave Hyland が、拡張子なしで保存されていた過去の議事録ファイル(2025年8〜10月分)にまとめて .md 拡張子を付与するとともに、複数の過去月の議事録を一括でコミットした。これにより TrustFrameworkAnalysis/minutes/ の整備が進んだ。
11月の議事録コミット
| ファイル | 内容 |
|---|---|
minutes/2025-11-03.md | ADT CG 定例ミーティング(8名) |
TrustFrameworkAnalysis/minutes/2025-11-10.md | SIDI TFA サブグループ(9名) |
minutes/2025-11-17.md | ADT CG 定例ミーティング(11名) |
11月24日の TFA サブグループは HackMD にアジェンダテンプレート(@adtcg/rkCS4gZ-Zg)が作成されたが、出席者・議事録欄は空白であり、GitHub にも対応ファイルは存在しない。新規イシューは確認されなかった。
6. 関連イベント
Biometrics Institute Showcase Australia(11月26日、キャンベラ/オンライン)
Dima Postnikov が Mickey および Olaf Grewe との連携を確認するアクションアイテムを担当した。ADT CG メンバーの現地参加が予定されていた。
IDPro Meetup Canberra(11月26日)
Olaf Grewe が会場を確保し、SailPoint が発表を行う予定。登録リンクは Slack と LinkedIn で告知。11月17日時点では参加予定者が約38名と見込まれていた。なお12月1日のミーティングで「11月26日の IDPro Canberra ミートアップは予定どおり実施された」と報告されたことが確認されている。
Trust Over IP 5周年記念シンポジウム(11月19–20日、オンライン)
John Scullen が紹介した TOIP の5周年記念オンラインシンポジウム。オーストラリア時間では深夜2時となるため参加の難しさが言及された。
Age Assurance Czech 業界朝食会(11月、詳細不明)
Victoria Richardson がブログ投稿の素材として言及。Age Assurance Czech の関係者を交えた業界朝食会から得た知見をまとめる予定とされた。
7. 今後の予定
2025年11月17日時点で予告されていた今後の予定:
- 2025年11月24日(月): SIDI Trust Framework Analysis サブグループ定例(17:00 AEDT)
- 2025年12月1日(月): ADT CG 定例ミーティング(グループ振り返り・OIDF 投票など)
- 2025年12月3日(水): ADT Roundtable Sydney
- 2025年12月8日(月): SIDI Trust Framework Analysis サブグループ(12月分)
- 2025年12月10日(水): オーストラリア SNS 年齢制限法 施行
- 2025年12月15日(月): ADT CG 年内最終定例ミーティング
- 2026年1月12日(月): ADT CG 定例ミーティング再開
- 2026年2月(予定): Innovation Day(日程は Doodle 投票で調整中)
8. 参考情報源
- openid-au-digital-trust ML アーカイブ(週次インデックス) — 週単位(Week-of-Mon-YYYYMMDD)でアーカイブされる。2025年11月の投稿は各週のアーカイブに分散して残っている
- ADT CG 定例ミーティング議事録 2025-11-03(GitHub) — 8名参加、OIDF Slack・Age Assurance・ConnectID マッピング・FAPI 2.0
- SIDI Trust Framework Analysis サブグループ議事録 2025-11-10(GitHub) — 9名参加、ACTIS アカウントクロージャー・年齢確認声明・比較作業のナラティブ化
- ADT CG 定例ミーティング議事録 2025-11-17(GitHub) — 11名参加、DSAC 代表派遣・Age Assurance ブログ・IDPro Canberra・TOIP シンポジウム
- openid/cg-australian-digital-trust GitHub — 議事録ファイル群(issues/PRs は11月中なし)
- ADT CG ページ(openid.net) — CG 概要・メンバー情報