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OpenID Foundation MODRNA WG 活動レポート (2024年5月)

執筆日: 2026-05-21(遡及執筆)。本記事は 2024 年 5 月の MODRNA WG 活動を、約 2 年後の視点から openid-specs-mobile-profile メーリングリストの公開アーカイブ、openid.net 上の公開情報、および同月前後の OpenID Foundation 全体・隣接 WG・関連業界イベントの公表記録をもとに再構成したものである。MODRNA WG の議事録は non-public 運用のため、コール内の詳細議論は公開チャネル上には残っておらず、本記事は ML アーカイブから読み取れる範囲の運用記録の整理を主としている。

1. 概要

MODRNA (Mobile Operator Discovery, Registration, & autheNticAtion) WG は、モバイルネットワークオペレータ (MNO) が OpenID Connect / OAuth 2.0 をベースに GSMA Mobile Connect 互換のアイデンティティサービスを提供するための相互運用プロファイルを策定する OpenID Foundation のワーキンググループである。共同議長は Bjorn Hjelm と John Bradley の 2 名、定例コールは隔週火曜 14:00-15:00 UTC(7:00-8:00 PDT、CEST 16:00)のカデンスで運営され、議事録は non-public、仕様ソースは bitbucket.org/openid/mobile/src/master/ で管理されている(github.com/openid/ 配下に MODRNA WG の公式リポジトリは存在しない)。

2024 年 5 月の MODRNA WG は、公開チャネル上ではきわめて静かな月であった。openid-specs-mobile-profile の公開アーカイブで本月にエントリが生成された週は Week-of-Mon-20240506 の 1 週のみで、合計投稿数は 2 通、いずれも共同議長 Bjorn Hjelm からの 5 月 7 日 (火) 定例コールの事前キャンセル通知 である。キャンセル理由は RSA Conference 2024(5/6〜9、San Francisco、Moscone Center)開催との重複である。

隔週火曜カデンス上、本月の定例コール候補日は 5 月 7 日 (火) と 5 月 21 日 (火) の 2 回である。5 月 7 日は RSA Conference 2024 開催と重なるため事前キャンセルが ML 上で告知され、5 月 21 日については ML 上にアジェンダ投稿・キャンセル通知のいずれも観測されず、開催・キャンセルのどちらであるかは公開チャネルからは確定できない。

本月の MODRNA 仕様群に関する新規ドラフト改訂・パブリックレビュー・Notice of Vote のアナウンスは ML・openid.net/tag/modrna/ のいずれにも存在しない。公開チャネルで観測できる MODRNA 固有の技術議論スレッドは月内ゼロであり、openid.net/tag/modrna/ 配下にも 2024 年 5 月付の MODRNA 固有アナウンスは存在しない。

OpenID Foundation 全体としては、本月は (i) 5/6-9 開催の RSA Conference 2024(San Francisco、Moscone Center、第 33 回)、(ii) 5/7 公表の "Post-Quantum Identity Standards" ブログ、(iii) 5/13 公表の OIDF Board への Mastercard 加入アナウンス、(iv) 5/17 公表の CFPB(米国消費者金融保護局)宛 US Open Banking 規則案へのコメントレター提出、(v) 5/26 公表の "AI for Identity Standards" ブログ、(vi) 5/28-31 開催の Identiverse 2024(Las Vegas、ARIA Resort & Casino、第 15 回、2,500 名以上参加)、(vii) 5/29 公表の AuthZEN WG の Authorization Interop 結果アナウンス、と Foundation 全体としては並走する政策エンゲージメント・新興技術カバレッジ拡張・隣接 WG 相互運用テスト の各プロセスが進行する密度の高い月であった。これらのいずれも MODRNA ML へのクロスポストは観測されない。

本月は、後の 6 月(6/4 コール EIC 2024 起因キャンセル、6/18 候補日サイレント運用)、7 月(7/30 標準 8 項目アジェンダ)、8 月(8/13 同テンプレート踏襲、8 項目テンプレートの最後の使用例)、9 月(9/19 Antitrust Statement 運用化、9/24 アジェンダで第 2 項目組み込み)、10 月以降の運用へと連なる一連の流れの 前段 に位置する月であり、4 月 9 日の標準 8 項目アジェンダ(Roll Call / Adoption of the Agenda / External Organizations / Events / Specification Status / OpenID Certification for MODRNA / Issue Tracker / AOB)が ML 上で確認できる直近の公開アジェンダである。

2. 公開された仕様・ドラフト改訂

2024 年 5 月中に MODRNA WG 名義で 新規のドラフト改訂アナウンス・パブリックレビュー告知・Notice of Vote は ML・openid.net/tag/modrna/ のいずれにも投稿されていない。MODRNA WG が保守する主要仕様群のステータスは、5 月末時点で以下のとおりであり、これは翌 6 月末・7 月末・8 月末時点と同一である。

仕様ステータス
OpenID Connect Client Initiated Backchannel Authentication – CoreFinal (2021-09)
OpenID Connect MODRNA Authentication ProfileImplementer's Draft 1
OpenID Connect Account PortingImplementer's Draft 1
OpenID Connect User Questioning APIImplementer's Draft 2
OpenID Connect MODRNA Discovery ProfileWorking Draft
OpenID Connect MODRNA Registration ProfileWorking Draft
Client Initiated Backchannel Authentication Profile (MODRNA 版)Working Draft

隣接 WG・Foundation 全体動向(参考、MODRNA 直接関与なし)

本月の MODRNA WG 固有の仕様改訂はないが、Foundation 全体としては以下の動きが進行していた。これらは MODRNA ML へのクロスポスト・言及はなされておらず、本月時点で MODRNA WG が組織的に追跡していた形跡は公開チャネル上には残っていない。

  • Post-Quantum Identity Standards ブログ公表(2024-05-07): OpenID Foundation が "Post-Quantum Identity Standards" と題したブログを公表。耐量子計算機暗号(PQC)への移行が NIST FIPS 標準化を控えた段階にあるなか、OpenID Connect・JWT・FAPI 等の OIDF 標準が依存する署名・鍵交換アルゴリズムの将来的な置き換えの論点を整理した。MODRNA WG の CIBA Core / Authentication Profile も JWS/JWE 署名検証に依存するため、長期的な PQC 移行戦略は MODRNA 仕様群にも波及する論点であるが、本月の MODRNA ML 上に明示的な議論は観測されない
  • OIDF Board への Mastercard 加入(2024-05-13 公表): OpenID Foundation が Mastercard の Board Member 加入を公表。決済・金融分野での FAPI および OpenID Connect のエンタープライズ採用拡大を背景としたガバナンス強化の動きであり、MODRNA WG が GSMA / 3GPP / CAMARA 経由で接続するモバイル決済・ID 連携領域とも間接的に交差する
  • CFPB 宛 US Open Banking コメントレター提出(2024-05-17 公表): OIDF が米国消費者金融保護局(CFPB)の Personal Financial Data Rights 規則案(Section 1033)に対するコメントレターを提出。FAPI ベースの相互運用標準を採用することの意義を主張する政策エンゲージメント文書。MODRNA 直接の交差はないが、Foundation 全体としての規制機関エンゲージメントの一例
  • AI for Identity Standards ブログ公表(2024-05-26): OpenID Foundation が "AI for Identity Standards" と題したブログを公表。AI エージェント・LLM 等の新興利用形態に対する OIDF 標準の対応領域を整理した。後の 2025 年 4 月に正式設立される AIIM (Artificial Intelligence Identity Management CG) の前駆的な発信に相当
  • AuthZEN WG Authorization Interop 結果公表(2024-05-29): AuthZEN WG が Identiverse 2024 会場で実施した Authorization Interop の結果を公表。当時設立 1 年未満の若い WG による初の相互運用テストの成果公開であり、MODRNA WG の中核ターゲットである認可ベース API アクセス制御(CAMARA API 認可・MODRNA Authentication Profile の RP-IdP 連携)にも長期的に関連する隣接領域

Identiverse 2024 における OpenID 関連プログラム(5/28-31、参考)

5/28-31 に Las Vegas の ARIA Resort & Casino で開催された Identiverse 2024(第 15 回、2,500 名以上参加)では、OpenID Foundation 関連のセッションとして "10 years of OpenID Connect"、"The Work of the OpenID Foundation"、"OpenID for Verifiable Presentations"、"OIDC4SSI / SIOP v2 / OIDC4VP / OIDC4VCI" 等が実施された。OpenID Connect の 10 周年(2014 年 2 月の Final 化から 10 年強)を記念するセッションが組まれたタイミングであり、MODRNA WG が CIBA Core を含むモバイル特化プロファイル群を 2021 年 9 月以来 Final 化済みで保守していることは、この 10 周年文脈の一翼を担う。MODRNA WG 固有のセッション登壇情報は公開チャネルから直接特定できないが、共同議長 Bjorn Hjelm および John Bradley 等のコアメンバーが Identiverse 2024 に現地参加した蓋然性は、後続 6/4 コールが EIC 2024 開催を理由に事前キャンセルされたタイミングと併せて高い。

3. ミーティングと議論

MODRNA WG の議事録は non-public 運用のため、定例コールの議題詳細・参加者・決定事項は公開されていない。隔週火曜カデンスから定まる 5 月の定例コール候補日と、ML 公開記録から読み取れる開催状況は以下のとおりである。

日付コール候補公開記録
2024-05-07 (火)定例Bjorn Hjelm より 5/7 13:40 UTC にキャンセル リマインダ投稿、続けて 13:41 UTC に Google カレンダー取消通知。RSA Conference 2024 を理由に事前キャンセル
2024-05-21 (火)定例ML 上にアジェンダ投稿・キャンセル通知・カレンダー取消通知いずれも観測されず。公開チャネルからは開催・キャンセルの確定不能

5 月 7 日コール: RSA Conference 2024 を理由とする事前キャンセル

2024-05-07 13:40:50 UTC(火曜日)、共同議長 Bjorn Hjelm から「REMINDER - MODRNA WG Call Canceled Today」と題したキャンセル リマインダが ML に投稿された(Week-of-Mon-20240506/001957.html)。本文は次のとおり短く、キャンセル理由を明示している。

All, As discussed at the last call, this is a reminder that today's MODRNA WG call is canceled because of the RSA conference this week. Kind Regards, Bjorn

(皆様、前回コールで議論したとおり、本日の MODRNA WG コールは今週の RSA カンファレンスのためキャンセルされる、というリマインダです。よろしくお願いします、Bjorn)

ここで言及されている "RSA conference this week" は、5/6〜9 に San Francisco の Moscone Center で開催された RSA Conference 2024(第 33 回、650 名以上のスピーカー・25 トラック・425 セッション・600 出展者を擁する世界最大級のサイバーセキュリティ会議)を指す。MODRNA WG のコアメンバーは北米の MNO / IAM ベンダー関係者(Verizon、Cisco、T-Mobile 等)を含み、北米時間と重なる RSA Conference 開催週は MODRNA WG の中核参加者が現地参加するため、定例コールを開催しても定足を得られない見込みであった。"As discussed at the last call" との文言から、本キャンセルは少なくとも前回の隔週コール(2024-04-23 火が候補日。ML 上にアジェンダ・キャンセル通知のいずれも観測されない)の場で口頭合意済みであったことがうかがえる。直前の 4 月 9 日コールについては Bjorn Hjelm から標準 8 項目アジェンダ(Roll Call / Adoption of the Agenda / External Organizations / Events / Specification Status / OpenID Certification for MODRNA / Issue Tracker / AOB)が ML 投稿されており(Week-of-Mon-20240408/001956.html)、その Events 項目には "OpenID Foundation Workshop, Sunnyvale, Apr. 15, 2024" や "IETF 120, Vancouver, Jul. 20-26, 2024" 等の 8 件の外部イベントが列挙されていた。5/7 キャンセルが「前回コールで議論済み」とされる文脈は、4/23 コールに関する公開痕跡が ML 上に残っていない点を踏まえると、4/9 もしくは 4/23 コール内での口頭合意を指す。

続けて 2024-05-07 13:41:43 UTC、Hjelm から「Canceled event: MODRNA WG @ Tue May 7, 2024 7am - 8am (PDT)」と題した Google カレンダー取消通知が ML に転送された(Week-of-Mon-20240506/001958.html)。本通知は MODRNA WG コール定例イベントが太平洋時間 7:00-8:00 で運用されていること、Zoom リンクが配布されていたこと、招待者リストに Cisco / T-Mobile / Deutsche Telekom / OpenID Foundation からの代表者(合計約 12 名)が含まれていたことを示している。これは MODRNA WG の中核参加者の所属が、北米(Cisco・T-Mobile)と欧州(Deutsche Telekom)の MNO・ベンダー、および OIDF スタッフを軸に構成されていることの公開チャネル上の確認材料となる。

5 月 21 日コール候補日: ML 上に告知なし

5 月 21 日(火)は隔週カデンス上の定例コール候補日にあたるが、本日付前後の openid-specs-mobile-profile ML アーカイブには、(i) Hjelm からのアジェンダ投稿、(ii) コールキャンセル リマインダ、(iii) Google カレンダー取消通知、(iv) 議事サマリ、のいずれも存在しない。5/20-26 週の週次インデックス HTML は生成されておらず、これは pipermail の挙動上「当該週の ML 投稿ゼロ」を意味する。

このため 5/21 コールが (a) 開催されたが Hjelm がアジェンダ ML 周知を省略した、(b) 静粛にキャンセルされた、(c) 開催されたが議事サマリ ML 共有が後続月と同様に行われなかった、のいずれであるかは公開チャネルからは確定できない。直前 5/7 コールが RSA Conference 2024 を理由に事前キャンセルされたパターンと、続く 5/28-31 に Identiverse 2024 が控えていたタイミング、さらに後続 6/4 コールが EIC 2024 を理由に事前キャンセルされる流れを照合すると、本日は コール候補日であるが ML 周知のなされなかった日 に該当する。Identiverse 2024 直前の準備期間と重なり、MODRNA WG コアメンバーの関心が現地参加準備に分散していた可能性が示唆されるが、これは推定であり議事録 non-public 運用下では確証できない。

公開議論の状況

5 月中に MODRNA ML 上で技術議論が交わされたスレッドは ゼロ である。Bitbucket Issue Tracker 側の新規起票・議論再燃の通知も ML には流れていない。本来、議事録 non-public の MODRNA WG では ML と Bitbucket Issue から議論を再構成するのが代替手段となるが、5 月はそのいずれにおいても再構成可能な技術議論ストリームが公開チャネルに観測されない月となった。

これは MODRNA WG が活動を停止していたという意味ではなく、(i) 5/7 コールが RSA Conference 2024 を理由に明示的にキャンセルされ、(ii) 5/21 コール候補日が ML 上では存在感を残さず、(iii) 月内に新規仕様改訂イベントが発生しなかった、(iv) MODRNA WG コアメンバーの 5 月中の関心が RSA Conference 2024(5/6-9)および Identiverse 2024(5/28-31)への現地参加に分散していた可能性が高い、という複数要因の重なりによる「公開チャネル上の沈黙」である。実質的な月内成果は 5/7 コールキャンセル通知 2 通 に集約される。

4. メーリングリストの主要スレッド

2024 年 5 月の openid-specs-mobile-profile の週次アーカイブ生成状況と投稿内訳は以下のとおり。

アーカイブ週投稿数主な内容
Week-of-Mon-202404290週次インデックス HTML 未生成(4/29〜5/5 に投稿ゼロ)
Week-of-Mon-202405062Hjelm の 5/7 コールキャンセル リマインダ + Google カレンダー取消通知(RSA Conference 起因)
Week-of-Mon-202405130週次インデックス HTML 未生成(5/13〜5/19 に投稿ゼロ)
Week-of-Mon-202405200週次インデックス HTML 未生成(5/20〜5/26 に投稿ゼロ。5/21 隔週コール候補日も ML 上の動きなし)
Week-of-Mon-202405270週次インデックス HTML 未生成(5/27〜6/2 に投稿ゼロ。Identiverse 2024 開催週 5/28-31 と重なる)

「3〜5 本選定」の対象となる技術議論スレッドは本月には存在しないため、本節では運用通知 2 件のみを紹介する。

1. REMINDER - MODRNA WG Call Canceled Today (2024-05-07)

RSA Conference 2024 (5/6-9、San Francisco) を理由とする 5/7 定例コールの事前キャンセル リマインダ。本文は 1 文("As discussed at the last call, this is a reminder that today's MODRNA WG call is canceled because of the RSA conference this week.")で、前回コール(4/23 火が候補日、もしくはそれより前の 4/9 コール)で既に口頭合意済みであった旨を明記している。本投稿への ML 上の返信・代替日程の提案は寄せられていない。

本キャンセルは MODRNA WG の運用慣行として、定例コール候補日が主要な外部 IAM イベント(RSA Conference・EIC・Identiverse・IETF・IIW)と重なる場合には事前キャンセルとする方針が暗黙に確立していることを示す事例の 1 つである。同様のパターンは、後の 6/4 コール(EIC 2024 起因キャンセル)、10/22 コール(11/19 アジェンダ準備優先で事前合意キャンセル)、11/5 コール(11/19 への前倒し合意で事前キャンセル)等の運用にも踏襲される。

2. Canceled event: MODRNA WG @ Tue May 7, 2024 7am - 8am (PDT) (2024-05-07)

Google カレンダーからの自動キャンセル通知の ML 転送。本通知は (a) MODRNA WG 定例コールが太平洋時間 7:00-8:00 (= 14:00-15:00 UTC、CEST 16:00-17:00) で運用されていること、(b) Zoom リンクが招待リンクに含まれていたこと、(c) 招待者リストに Cisco / T-Mobile / Deutsche Telekom / OpenID Foundation からの代表者(合計約 12 名)が含まれていたこと、を公開チャネル上の事実として残している。MODRNA WG コアメンバーの所属の輪郭が公開チャネル上で確認できる数少ない記録であり、北米(Cisco・T-Mobile)と欧州(Deutsche Telekom)の MNO・ベンダー軸が WG の議論を担っていることを示す材料となる。

その他

上記 2 通以外の投稿は 5 月中の MODRNA ML には存在しない。隣接 WG・Foundation 全体からのクロスポスト・転送投稿(5/7 Post-Quantum Identity Standards ブログ、5/13 Mastercard Board 加入、5/17 CFPB レター、5/26 AI for Identity Standards ブログ、5/29 AuthZEN Authorization Interop 結果)も本月の MODRNA ML には届いておらず、本 ML に閉じた情報源のみを購読する WG メンバーは Foundation 全体・隣接 WG プロセスを把握できない状態にあった。

5. GitHub 上の議論

MODRNA WG の仕様ソースは GitHub ではなく Bitbucket Cloud (bitbucket.org/openid/mobile/src/master/) で管理されている。GitHub 側に MODRNA WG の公式一次リポジトリは存在しない(github.com/openid/MODRNA といった誤記が一部で見られるが、そのようなリポジトリは現存しない)。

Bitbucket Cloud は SPA 描画のため外部からのクローリングに適さず、本稿の調査範囲では 5 月中の Bitbucket Issue / PR / コミット活動の網羅的件数を確認できない。ただし、MODRNA WG の ML 上で 5 月中に Bitbucket 由来の新規 Issue / PR 起票通知が一切流れていない ことから、Issue Tracker 側でも目立った新規動作はなかったと推定できる(Issue Tracker での新規起票や活発な議論再燃があれば、議長 Hjelm が後続コールのアジェンダ「Issue Tracker」項目に具体的な Issue 番号を併記するか、別途 ML に告知する運用が後続月で観測されているため)。

なお、Atlassian による Bitbucket Cloud Issues / Wiki の 2026-08-20 完全廃止アナウンスは本時点では未公表であり(2026 年 3 月公表)、MODRNA WG として Issue Tracker 代替候補を検討する動きは本月の公開チャネルには存在しない。後の 2025 年 1 月 30 日に Mike Jones が MODRNA ML から存在を明示することになる PR #18 (bitbucket.org/openid/mobile/pull-requests/18、CIBA Core 1.0 → errata 1 draft の差分、編集者 Joe DeCock) も、5 月時点では公開チャネルから存在が確認できず、その伏線となる IETF OAuth interim (interim-2025-oauth-04) もまだ 8 ヶ月以上先の予定にすら入っていない。

6. 関連イベント

RSA Conference 2024(2024-05-06 〜 2024-05-09、San Francisco)

本月の MODRNA WG の運用に 最も直接的に影響を与えた外部イベント が、San Francisco の Moscone Center で開催された RSA Conference 2024 である。第 33 回となる本会議には世界中から多数の delegates が参加し、650 名以上のスピーカー、25 トラック、425 セッション、600 出展者で構成された大規模イベントであった。NIST Cybersecurity Framework 2.0 への対応、パスワードレス認証、ID 駆動型脅威への対策等が主要テーマとして取り上げられた。

MODRNA WG の 5/7 定例コールが RSA Conference 2024 を理由に事前キャンセルされたのは前述のとおり。RSA Conference は北米サイバーセキュリティ業界最大級の年次イベントであり、北米 MNO・IAM ベンダー関係者(Cisco・T-Mobile・Verizon 等)・OIDF 役員が同会期中は San Francisco 現地に集中することから、MODRNA WG の中核参加者にとって 5 月第 1 週の定例コールは事実上開催不能となる構造的事情がある。

Bjorn Hjelm 本人を含む MODRNA WG コアメンバーの RSA Conference 2024 セッション登壇情報は公開チャネル上では追跡できていないが、MODRNA WG / Mobile Connect / CIBA に関連する話題が RSA Conference の認証関連トラックで取り上げられる慣行は過去にも観測されており、本 2024 年も同様の場でロビー交流・情報共有がなされた蓋然性は高い。

Identiverse 2024(2024-05-28 〜 2024-05-31、Las Vegas)

5 月末に ARIA Resort & Casino, Las Vegas で開催された Identiverse 第 15 回。2,500 名以上のアイデンティティ セキュリティ専門家が参加し、70 時間以上のセッションが提供された。OpenID Foundation 関連セッションとしては "10 years of OpenID Connect"、"The Work of the OpenID Foundation"、"OpenID for Verifiable Presentations"、"OIDC4SSI / SIOP v2 / OIDC4VP / OIDC4VCI" 等が実施された。OpenID Connect の 10 周年(2014 年 2 月の Final 化から 10 年強)を記念するセッションが組まれたタイミングであり、MODRNA WG が CIBA Core を含むモバイル特化プロファイル群を 2021 年 9 月以来 Final 化済みで保守していることは、この 10 周年文脈の一翼を担う。

MODRNA WG 固有のセッションは公開チャネルからは特定できないが、本会議直後の 6/4 MODRNA WG コールが EIC 2024 を理由にキャンセルされたタイミングは、Identiverse 2024 → EIC 2024 と続く 2 大 IAM カンファレンスへの参加が MODRNA WG コアメンバーの 5 月末〜6 月上旬日程を圧迫していたことを示唆する。本月 5/21 コール候補日の ML サイレント運用も、Identiverse 2024 直前の準備期間と重なることが一因として考えられる。

Post-Quantum Identity Standards ブログ公表(2024-05-07)

§2 で詳述。OpenID Foundation が PQC 移行を見据えた論点整理ブログを公表。MODRNA 固有の言及はないが、CIBA Core / Authentication Profile が依存する JWS/JWE 署名・鍵交換アルゴリズムの将来的な置き換えは長期的な MODRNA 仕様改訂の論点となりうる。

OIDF Board への Mastercard 加入(2024-05-13 公表)

§2 で詳述。決済・金融分野での FAPI / OpenID Connect エンタープライズ採用を背景としたガバナンス強化。MODRNA WG が GSMA / 3GPP / CAMARA 経由で接続するモバイル決済・ID 連携領域とも間接的に交差する。

CFPB 宛 US Open Banking コメントレター提出(2024-05-17 公表)

§2 で詳述。OIDF が CFPB の Personal Financial Data Rights 規則案(Section 1033)に FAPI ベースの相互運用標準を採用することの意義を主張する政策エンゲージメント文書を提出。MODRNA 直接の交差はないが、Foundation 全体としての規制機関エンゲージメントの一例。

AI for Identity Standards ブログ公表(2024-05-26)

§2 で詳述。AI エージェント・LLM 等の新興利用形態に対する OIDF 標準の対応領域整理。後の 2025 年 4 月に正式設立される AIIM (Artificial Intelligence Identity Management CG) の前駆的な発信に相当。

AuthZEN WG Authorization Interop 結果公表(2024-05-29)

§2 で詳述。AuthZEN WG が Identiverse 2024 会場で実施した Authorization Interop の結果を公表。当時設立 1 年未満の若い WG による初の相互運用テスト成果公開。MODRNA WG の中核ターゲットである認可ベース API アクセス制御にも長期的に関連する隣接領域。

CAMARA プロジェクトの Meta-Release Fall24 準備期間

Linux Foundation 配下の Telco API Alliance である CAMARA プロジェクトが、後の 9 月 16 日に予定する初の正式メタリリースに向けて 25 API(13 サブプロジェクト)の品質検証・統合作業を進めていた期間。CAMARA 内部では「Security and Interoperability Profile based on OAuth 2.0 and OpenID standards」という方針が確定済みであり、MODRNA WG の対象領域(CIBA Core、MODRNA Authentication Profile)は CAMARA の API セキュリティ層と密接に関わる。OpenID Foundation は 2023 年 11 月以来 Associate Member として参加。本月の MODRNA ML 上で CAMARA への明示的なクロスポスト・言及はなされていないが、RSA Conference 2024 および Identiverse 2024 開催週中に MODRNA WG コアメンバーが GSMA / CAMARA 関係者と現地でロビー交流した蓋然性は考えられる。

7. 今後の予定(2024 年 5 月末時点の視点)

5 月末時点の公開情報からは、MODRNA WG の 6 月以降の明示的な予定は ML・openid.net いずれにも掲載されていない。隔週カデンスと月内事象から推定される事項は以下のとおり。

  • 定例コール: 隔週火曜サイクル(5/7 キャンセル、5/21 候補日不明)に従えば、6 月の候補日は 6 月 4 日(火)と 6 月 18 日(火)の 2 回。6/4 は EIC 2024(6/4-7、Berlin)開催と重なるため事前キャンセルが見込まれる — 結果として 6/4 はキャンセル リマインダ ML 投稿として実現する。6/18 は隔週カデンス上の候補日として残る
  • EIC 2024(2024-06-04 〜 2024-06-07、Berlin): 欧州 IAM コミュニティの最大級年次イベント。欧州 MNO(Deutsche Telekom、Telefónica 等)および GSMA 関係者・OIDF 役員が現地参加することから、MODRNA WG のコアメンバーの 6 月上旬日程は圧迫される見込み
  • OpenID Federation 1.0 第 4 Implementer's Draft Public Review: AB/Connect WG による Federation 第 4 ID Public Review が 6 月初頭に開始予定(実際には 6/2 開始、6/1〜7/16 の 45 日間)。MODRNA 仕様群との直接の交差はないが、Foundation 全体としての ID プロセス進行イベント
  • IETF 120 Vancouver(7/20-26): 北米 IAM 関係者の主要関心事項。MODRNA WG コアメンバー(Bjorn Hjelm / John Bradley 等)の現地参加は通例であり、本会期中の OAuth セッション動向は MODRNA 仕様群の将来改訂に潜在的に影響する
  • CAMARA Meta-Release Fall24(9/16 予定): OAuth 2.0 / OpenID 標準ベースのセキュリティプロファイルを伴う初の正式メタリリースが 9 月予定。MODRNA WG 仕様群(CIBA Core、MODRNA Authentication Profile)の CAMARA セキュリティプロファイル仕様への参照標準としての位置づけが進む可能性
  • Implementer's Draft 群の現状維持: MODRNA Authentication Profile ID1 / Account Porting ID1 / User Questioning API ID2 はいずれも次版改訂の公式アナウンスがなく、現行ステータスを維持

5 月の対外可視な活動は (i) 議長 1 名による 5/7 コールキャンセル運用通知 2 通、(ii) 5/21 候補日のサイレント運用、の 2 件に集約される。当時の読者にとっては「RSA Conference 2024 開催に伴うキャンセルで始まり、Identiverse 2024 を月末に控えた静かな運用月」として記憶される月であり、後の月から振り返ると、本月は 6 月の EIC 2024 起因キャンセル月、7 月の同様の静寂月、8 月の 8 項目テンプレート踏襲、9 月の Antitrust Statement 運用化、10 月の OIDF Hybrid Workshop での 5 分枠 WG Update 発表、11〜12 月の連続キャンセル運用、2025 年 1 月下旬の IETF OAuth interim を経て CIBA Core errata 1 draft 公開へと至る一連の流れの 最も静かな起点 として位置づけられる。

8. 参考情報源