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OpenID Foundation R&E WG 活動レポート (2025年3月)

執筆日: 2026-05-18(遡及執筆)

1. 概要

R&E WG(Research and Education Working Group)は、研究・教育(R&E)セクターにおける OpenID Connect の採用を促進するため、R&E セクター向け OpenID Connect プロファイル、R&E 固有のクレーム・スコープ、エンティティメタデータ拡張の策定を目的とする OpenID Foundation のワーキンググループである。WG 議長は Davide Vaghetti(GARR)が務め、議事録は伝統的に非公開(non-public)、公式 GitHub リポジトリも確認できない。

2025 年 3 月の R&E WG は、公式メーリングリスト openid-specs-rande の公開アーカイブに新規エントリゼロという従来からの沈黙状態を継続した。一方で、R&E WG が採用基盤として注視する OpenID Federation 1.0 の draft 42 が 3 月 5 日に公開され、同日 OIDF 公式から 4 月 28〜30 日 Stockholm SUNET での Federation Interop イベント が告知されるなど、R&E セクター(とりわけ R&E NREN である SUNET)と OpenID Federation の接点が大きく動いた月であった。さらに月末の 3 月 31 日には R&E アイデンティティコミュニティの定例集会 TIIME Unconference 2025 が英国 Reading で開幕し、20th FIM4R Workshop が併催された。

本レポートは、R&E WG 単体の公式公開アウトプットが乏しかった事実を率直に記述しつつ、R&E コミュニティが採用基盤とする OpenID Federation 本体の改訂・Interop 準備、および月末の R&E 系カンファレンスの起点となった出来事を、公開された一次情報から再構成する。


2. 公開された仕様・ドラフト改訂

R&E WG の公式ドラフト

R&E WG の仕様一覧(openid.net/wg/rande/specifications)における 3 月末時点のステータスは、Final Specifications / Implementer's Drafts / Drafts のいずれも「None yet.」のままで、3 月中に新規ドラフト公開・版改訂・パブリックレビュー開始等の公開アクションは確認できなかった。WG ページ(openid.net/wg/rande)の Meeting Schedule 欄も「–」表示で、3 月の定例 WG コール開催の有無は公開情報からは確認できない。

R&E WG チャーターが掲げる成果物(R&E セクター向け OpenID Connect プロファイル、R&E 固有クレーム/スコープ、エンティティメタデータ拡張)は、いずれも 3 月時点で OIDF 配下の公開ドラフト段階に達していない。

R&E が採用基盤とする OpenID Federation 1.0 draft 42 の公開

3 月 5 日に OpenID Federation 1.0 draft 42 が公開された。同版は 4 月 28〜30 日に Stockholm SUNET で開催される OpenID Federation Interop の 基準仕様 に位置づけられ、参加 14 実装はこの draft 42 に揃えて相互運用テストを行う段取りであった。R&E WG が将来策定するプロファイル類が依拠する信頼基盤の固定化に向けた重要な前進であり、R&E コミュニティにとっても 4 月以降の Interop に直結する版である。

OIDF 公式アナウンスでの Federation Interop 告知

同じ 3 月 5 日、OIDF 公式は OpenID Federation Interop Event, April 28-30, 2025 を公表し、SUNET オフィス(Tulegatan 11, Third Floor, 113 53 Stockholm)での 3 日間のテストイベントへの参加(対面・リモート併用)を募集した。会場ホストは R&E セクターの中核 NREN である SUNET(Leif Johansson 中心)で、過去の NORDUnet 2017、SURFnet 2018、TNC/REFEDS 2019、Internet2/REFEDS 2019 と続いてきた R&E コミュニティ主導の Federation Interop の系譜に連なる位置づけであった。3 月は同イベントの参加実装登録・準備期にあたり、R&E 系実装者の関与もここから本格化した。


3. ミーティングと議論

R&E WG の定例コール議事録は伝統的に non-public 運用で、2025 年 3 月の定例コール開催日・参加者・議論内容は公開されていない。openid.net/wg/rande/ のミーティング欄も「–」表示で、定例の頻度は不定とされている。

そのため、本節では R&E コミュニティが 3 月中に表に出した議論の起点となった公開イベントを整理する。

OIDF Hybrid Workshop / IIW Spring 2025 / Federation Interop の準備フェーズ

4 月の Spring 2025 IIW 直前の OIDF Hybrid Workshop(4 月 7 日、Google Sunnyvale)および SUNET Interop(4 月 28〜30 日)に向けた準備が 3 月中に進行していた。Federation Interop については参加実装登録のシート(公開 Google Sheets)が 3 月中に立ち上がり、最終的に 14 実装・30 名(15 か国)の参加に結実する(4 月末時点の確定)。R&E WG 自身が主催する公開セッションは 3 月中には確認できないが、Federation Interop への R&E 系参加者の準備という意味では 3 月が起点であった。

TIIME Unconference 2025 の開幕(3 月 31 日 FIM4R 併催)

TIIME(Trust and Internet Identity Meeting Europe)は R&E アイデンティティコミュニティの中心的なアンカンファレンスで、2025 年版は 4 月 1〜3 日に University of Reading で開催されたが、前日 3 月 31 日午後(13:00〜17:00 BST)に 20th FIM4R Workshop が併催された(FIM4R 公式告知)。

20th FIM4R Workshop は研究インフラの Federated Identity Management 要件についての議論を、TIIME 本体に合流させるための準備会の位置づけで、R&E コミュニティの主要参加者が一堂に会する場であった。3 月末日として、これは R&E WG の関心領域(R&E プロファイル、eduPerson/SCHAC 属性、エンティティメタデータ拡張)と直接重なる議論の起点になっている。なお FIM4R 自体は OIDF の WG ではないが、R&E WG メンバー・REFEDS OIDCre メンバーの多くが両者に重複して参加するため、R&E WG の対外活動の文脈としては不可分である。

REFEDS OIDCre グループの活動

REFEDS OIDCre(OpenID Connect for Research and Education)グループは R&E WG の隣接コミュニティで、SAML2 と OIDC のマッピング BCP ドラフトを公開コンサルテーションに付している(Consultation: SAML2 and OIDC Mappings)。3 月中の OIDCre グループ内議論はメーリングリスト oidcre@lists.refeds.orgSympa アーカイブ)が購読者限定公開のため公開情報からは追跡できないが、3 月末の FIM4R / TIIME に向けた論点整理が進められていたことは状況証拠から推測できる。


4. メーリングリストの主要スレッド

openid-specs-rande ML(アーカイブ)の 2025 年 3 月のスレッド数: 0 件

公開アーカイブの親インデックスを確認すると、2024 年 10 月以降 2025 年 6 月までの全週インデックス(3 月相当の Week-of-Mon-20250303 / 20250310 / 20250317 / 20250324 / 20250331 を含む)はいずれも HTTP 404 で生成されておらず、ML への公開投稿ゼロが事実として確認できる。openid-specs-rande は週次インデックスのみ提供されるリストで、月次形式(2025-March/)の URL は元から存在しない。

R&E WG メンバー間の議論は、非公開の WG 定例コール、REFEDS Slack、GÉANT 内部 ML、3 月末の FIM4R / TIIME 等の対面イベント等で進行していたと見られるが、外部からは追跡できない。

参考として、隣接コミュニティの REFEDS OIDCre メーリングリストoidcre@lists.refeds.org、Sympa アーカイブ)も購読者限定公開のため、3 月の投稿状況を公開情報から再構成することはできなかった。REFEDS 側の wiki(wiki.refeds.org/display/GROUPS/OIDCre)は 2018 年 12 月で更新が止まったままで、3 月時点の活動状況を wiki から追跡することもできない。


5. GitHub 上の議論

R&E WG の OIDF 公式 GitHub リポジトリは存在しない。openid.net/wg/rande/ にも公開リポジトリへの参照はない。

R&E 領域の隣接コミュニティ(GÉANT / REFEDS)が維持する公開リポジトリの 2025 年 3 月の活動について、以下を確認した。

  • GEANT/edugain-openidfed: eduGAIN 向け OpenID Federation トラストモデル文書群。2025 年 3 月の新規 PR・Issue は確認できず、3 月初頭のマージを最後にストール状態に入っている
  • refeds-oidcre/eduperson-jwt-claims: eduPerson/SCHAC 属性を JWT クレームとして伝達するためのドラフト仕様。2025 年 3 月の新規アクティビティなし。最新コミットは 2016 年 1 月で長期休眠
  • surfnet-niels/refeds-oidcre-saml-oidc-mapping: SAML 2.0 と OIDC の属性・識別子マッピングを記述するドラフト。2025 年 3 月の新規アクティビティなし。最新コミットは 2017 年 9 月で長期休眠

これらは厳密には R&E WG の成果物ではなく、隣接コミュニティが個別に維持しているリポジトリだが、R&E 実装者が参照する周辺資産として継続観測の対象になる。2025 年 3 月時点で R&E 関連の公開 GitHub アウトプットは新規生成されていない。

R&E WG が依拠する OpenID Federation 本体のリポジトリopenid/federation)については、3 月 5 日の draft 42 公開に向けた最終整理と、4 月の SUNET Interop に向けた Issue 整理が並行して進行していたが、これらは Federation WG(AB/Connect 配下)の活動範囲であり R&E WG の議論ではない。詳細は同月の AB/Connect WG 月次レポートで扱う範囲となる。


6. 関連イベント

Gartner IAM Summit London 2025(3 月 24〜25 日、ロンドン)

OIDF が AuthZEN WG と Shared Signals WG の相互運用デモを Gartner IAM Summit に持ち込んだ(AuthZEN Interoperability Session at Gartner IAM London / Shared Signals Interoperability at Gartner IAM)。AuthZEN は 15 ベンダ、Shared Signals は 9 ベンダの参加で、OIDF 主催イベントとして 2025 年前半の対外プレゼンスの中心となった。R&E WG 単独のデモ・登壇枠は確認できないが、R&E セクターのエンタープライズ寄りメンバーが Federation 議論を持ち込む副次的な場となった可能性はある。

20th FIM4R Workshop(3 月 31 日、英国 University of Reading)

R&E の Federated Identity Management 要件を議論する定例ワークショップの第 20 回。TIIME 2025 開幕前日に併催され、研究インフラ側の論点を TIIME 本体に合流させる起点となった。R&E WG の関心領域と直接重なる R&E プロファイル・属性・メタデータ拡張議論の起点。

4 月開催の前準備

  • OIDF Hybrid Workshop(4 月 7 日、Google Sunnyvale): Spring 2025 IIW 直前の OIDF 公式ワークショップ。3 月中に告知・登録が進行
  • IIW XL(第 40 回、4 月 8〜10 日、Computer History Museum): アンカンファレンス形式の業界定例
  • OpenID Federation Interop(4 月 28〜30 日、Stockholm SUNET): 3 月 5 日に公式告知、参加実装登録が 3 月中に進行。R&E 系 NREN である SUNET が会場ホスト

7. 今後の予定(2025 年 3 月末時点の視点)

3 月末時点で R&E コミュニティが注視していた次月以降の動向は以下のとおり。

  • TIIME Unconference 2025 本体(4 月 1〜3 日、Reading): OpenID Federation 関連のブレイクアウトセッション("Enable Vanilla OIDC RPs for OIDFed"、"OpenID Fed topologies"、"OIDFed and Research Requirements"、"eduGAIN Futures"、"REFEDS VC / eduID in wallets" 等)が予定され、R&E WG の関心領域と直接重なる議論が予告されている
  • OpenID Federation Interop(4 月 28〜30 日、Stockholm SUNET): 14 実装・30 名規模が見込まれ、draft 42 を基準仕様として相互運用テストを実施予定。R&E NREN の SUNET 主催という意味で R&E コミュニティにとって重要なマイルストーン
  • R&E WG 自身のドラフト整備: OIDF 配下の公式仕様は引き続き「None yet.」のまま。対外可視性の改善が課題として残る
  • REFEDS OIDCre グループとの仕様調整: SAML2-OIDC マッピング BCP の公開コンサルテーション継続、eduPerson JWT クレームドラフトの位置づけ整理

3 月末時点の R&E WG(OIDF 配下の公式 WG として)の対外可視性は、月内に公式 ML・公式 GitHub・公式ドラフトのいずれにも新規アウトプットを残さなかった一方で、月末の FIM4R / TIIME と月初の Federation Interop 告知という形で R&E セクターのコミュニティ活動に大きな伏線が引かれた月であった。R&E 仕様策定の実体作業が OIDF 配下から REFEDS / GÉANT 配下へ重心を移していく構造が、この月の活動分布からも引き続き読み取れる。


8. 参考情報源