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OpenID Foundation iGov WG 活動レポート (2026年3月)

執筆日: 2026-04-16。本記事は 2026年3月 の活動を遡及的にまとめたものです。

1. 概要

iGov (International Government Assurance) WG は、公共部門サービスへの認証・属性情報共有を国際的に標準化するため、OAuth 2.0 および OpenID Connect のセキュリティ・プライバシープロファイルを開発する OpenID Foundation のワーキンググループです。チェア: John Bradley (Yubico)。

2026年3月の最大のイベントは、iGov Profile for OAuth 2.0 の初 Implementer's Draft 承認に向けた公開レビュー期間の完了と投票通知の発出です。45日間のパブリックレビューが 3月28日に終了し、翌 3月29日から会員投票が開始されました。これは iGov WG が年単位をかけて仕上げてきた OAuth 2.0 プロファイルが、はじめて正式な仕様ステータスへ移行する里程碑となります。

2. 公開された仕様・ドラフト改訂

iGov Profile for OAuth 2.0 — draft-09 パブリックレビュー完了

項目内容
仕様名International Government Assurance (iGov) Profile for OAuth 2.0
ドラフト版openid-igov-oauth2-1_0-09
エディターK. Burgin (MITRE), T. Clancy (MITRE)
初版公開2025年12月18日
パブリックレビュー期間2026年2月11日〜2026年3月28日(45日間)
投票通知発出2026年3月22日

本仕様は iGov OAuth 2.0 プロファイルの初めての Implementer's Draftであり、IP 保護が付与される安定版として位置づけられます。なお iGov WG としては OpenID Connect プロファイル (draft-03) が 2018年10月に先行して Implementer's Draft となっている。

フォーマット: HTML (openid-igov-oauth2-1_0-09.html)、XML、TXT で提供。

draft-09 の主な技術的変更点

draft-09 は以下の改訂を含んでいます:

  • RS256 削除・PS256 追加: RS256 要件が撤廃され、PS256 (RSASSA-PSS with SHA-256) が署名アルゴリズム要件に加わった。ES256 および Ed25519 も引き続き許容
  • ポスト量子暗号への言及追加: NIST の PQC 標準化を参照し、ECDHE-MLKEM (ハイブリッド鍵交換) のドラフトガイダンスを追記
  • 重複削除・誤記修正: 複数セクションにまたがる冗長な記述を整理

draft-09 の主要な技術要件

クライアント要件:

  • TLS 1.3 以上必須(相互運用性のために特定の TLS 1.2 暗号スイートを許容)
  • JWT 署名: PS256 / ES256 / Ed25519 のいずれか必須、"none" アルゴリズム禁止
  • RSA 鍵は最低 2048 ビット、楕円曲線鍵は最低 224 ビット
  • PKCE (S256 メソッド) 必須
  • sender-constrained トークン必須: mTLS または DPoP を利用
  • トークンエンドポイント認証: private_key_jwt または mTLS
  • state パラメーター: エントロピー 128 ビット以上

認可サーバー要件:

  • authorization_code グラントを必須サポート、implicit グラント禁止
  • JWT アクセストークン必須: iss, client_id, exp, jti, sub, aud, scope, iat, cnf クレームが要求される
  • トークンイントロスペクションエンドポイント必須
  • 動的クライアント登録サポート

プロテクテッドリソース要件:

  • Bearer トークンは Authorization ヘッダー経由のみ受け入れ
  • JWT の aud クレーム検証必須
  • RFC 9470 に基づくステップアップ認証チャレンジをサポート

iGov Profile for OpenID Connect 1.0 — draft-04

OAuth 2.0 プロファイルと並行して、OpenID Connect 1.0 プロファイル (draft-04) も公開されている。こちらは 3月時点でドラフトステータスのまま推移しており、今回の Implementer's Draft プロセスには含まれていない。

3. ミーティングと議論

iGov WG の会議体は 4週間ごとの火曜日 8:00 AM PT に開催されている。2026年3月の定例ミーティング(推定: 3月3日または3月31日前後)の議事録は非公開であり、OpenID Foundation の公開リソースには掲載されていない。

議事録が non-public な WG であるため、以下では ML とパブリック記録から再構成した情報を記述する。3月の定例ミーティングでは、進行中のパブリックレビューへの対応状況や、3月22日付の投票通知の準備が主要議題であったと推測される。

4. メーリングリストの主要スレッド

openid-specs-igov メーリングリストの公開アーカイブは週単位のインデックス形式であり、2026年3月分は 3月9日週に 1 件の投稿が記録されている。

iGov WG repository transition plan (for member feedback by March 19) — 2026-03-09 開始

  • 投稿者: Tom Clancy(MITRE、仕様共同エディター)、Kelley Burgin(MITRE、共同エディター)
  • 回答期限: 2026年3月19日

概要: iGov WG の仕様リポジトリのホスティング基盤と文書フォーマットを刷新する提案が、コンセンサス確認として WG メンバーに共有された。提案の要旨は以下のとおり:

  1. OpenID Connect プロファイルおよび Use Cases: 既存の Bitbucket リポジトリは read-only のアーカイブとして保存し、RFC Markdown 形式の新版を GitHub 上に作成する。未解決の issue はトリアージを経て GitHub に移管し、以後は GitHub が正式な作業基盤となる。
  2. OAuth 2.0 プロファイル: 進行中のレビューが完了するまでは Bitbucket 上で作業を継続し、その後 RFC Markdown に変換したうえで GitHub 上で公開する。既存の Bitbucket リポジトリはアーカイブ化する。

反対意見がある場合には「具体的な懸念点と、可能であれば代替案」を併せて提示するよう求められており、コンセンサス形成プロセスとして位置づけられている。この提案は、RFC XML から Markdown への書式移行と、Bitbucket から GitHub への段階的なホスティング移行を同時に推進するものである。

パブリックレビュー期間中のフィードバック送付先は当該 ML であるが、draft-09 の技術内容そのものに対する公開スレッドは 3月の ML アーカイブ上には記録されていない。

5. リポジトリ上の議論

2026年3月時点における iGov WG の仕様リポジトリは Bitbucket (bitbucket.org/openid/igov) にホストされている。GitHub の openid Organization 配下には iGov の公式リポジトリは存在しないが、前述の「repository transition plan」でエディター陣から Bitbucket から GitHub への段階的な移行案が示されており、OpenID Connect プロファイルと Use Cases は先行して GitHub 上で RFC Markdown 形式の新版が作成される予定である。

2026年3月に向けた活動として、draft-09 の仕様文書(HTML/XML/TXT)がパブリックレビュー用に公開されていた。本レポートでは Bitbucket 上の個別 commit 履歴までは辿っていないが、レビュー期間中のエディトリアル修正や技術的コメントへの対応が継続的に反映されていたと考えられる。

6. 関連イベント

2026年3月時点で iGov WG が明示的に関与したカンファレンスや外部イベントは、公開記録の範囲では確認されていない。

なお、関連する文脈として OpenID Foundation は 2026年2月に OpenID for Verifiable Credentials の self-certification プログラムを開始しており、iGov の Implementer's Draft 化と合わせて、各 WG における仕様成熟化が加速している時期にあたる。

7. 今後の予定(2026年3月末時点の視点)

2026年3月末時点で予定されていた主な動き:

  • 2026年3月29日〜4月12日: iGov Profile for OAuth 2.0 の Implementer's Draft 承認投票
    投票ページ: https://openid.net/foundation/members/polls/403
  • 投票結果を受けて Implementer's Draft として正式公開
  • iGov Profile for OpenID Connect 1.0 (draft-04) の後続作業継続

8. 参考情報源