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OpenID Foundation Shared Signals WG 活動レポート (2025年4月)

執筆日: 2026-05-18(2025 年 4 月分の遡及執筆)

1. 概要

Shared Signals Working Group(以下 SSF WG、旧称 RISC WG)は、ゼロトラスト・継続的アクセス評価のための非同期セキュリティイベント共有プロトコルを策定する OpenID Foundation のワーキンググループである。共同議長は Atul Tulshibagwale (SGNL)、Sean O'Dell (Disney)、Shayne Miel (Cisco) の 3 名体制。主要成果物は openid/sharedsignals で管理されている以下 3 仕様である:

  • Shared Signals Framework (SSF): Transmitter / Receiver 間の非同期通信 API 基盤
  • Continuous Access Evaluation Profile (CAEP): ゼロトラストにおけるアクセス状態変化通知プロファイル
  • Risk Incident Sharing and Coordination (RISC) Profile: クレデンシャル詰め込み・アカウント乗っ取り対策プロファイル

2025 年 4 月時点では、SSF / CAEP / RISC の 3 仕様はいずれも Implementer's Draft フェーズ にあり、WG は 「v1Final へ向けた仕様確定作業の中盤」 に位置していた。Final 仕様としての公開はまだ実現しておらず、5 月後半に WG Last Call を発出し、Identiverse 2025(6 月開催)直前に OIDF Public Review プロセスへ進む計画に向けて、未解決論点を「v1Final で扱うか、vFuture(v2 以降)へ繰り越すか」の仕分け作業が進行していた。

4 月の月間活動は 大型カンファレンス 2 つ(IIW XL: 4/8-10、RSA Conference 2025: 4/28-5/1)と重なって 2 回の定例コールがキャンセル され、3 回(4/1・4/15・4/22)の定例コールのみが開催される変則的な月となった。月内の主要議題は以下の通り:

  • PR #244(イベントメタデータ追加)の「Thunderdome」議論と、最終的なクローズ判断
  • Issue #249 として 4/3 に新規起票された Flow Control 問題(後の WG Last Call まで尾を引くテーマ)
  • 「Receiver は理解できないイベントフィールドを無視すべき」という SSF 拡張性方針の合意(PR #250 として 4/24 マージ)
  • PR #248(Error Table 整理)における「規範的記述と表記載のどちらが真実の源か」議論
  • PR #239(events_supported フィールドのリバート)による「v1 範囲を絞り込む」運用方針の徹底

定例コールは 4/1・4/15・4/22 の 3 回が開催され、4/8 は IIW XL、4/29 は RSA Conference のため共同議長不在によりキャンセルされた。openid-specs-risc ML の投稿数は 4 月通算で約 19 通(うち大半が GitHub bot による issue / PR コメント通知で、人手による技術投稿は call notes と 2 件のキャンセル通知の計 5 通程度)。実質的な技術議論は GitHub の PR / Issue と HackMD 議事録に集中している。


2. 公開された仕様・ドラフト改訂

2025 年 4 月中に Final 仕様の新規公開、Implementer's Draft 投票通知、パブリックレビュー開始通知のいずれも確認できなかった。WG はこの月、v1Final ドラフトを「OIDF 提出可能な状態」に整える作業を粛々と進めていた。4 月にマージされた主要 PR は以下:

PRタイトルauthorマージ日概要
#243Fixes issue #208 - Poll endpoint should require authorizationjischr4/1SSF §7.1.1 に Poll Endpoint への authorization を明記。文言強度は SHOULD vs MAY の議論を経て RECOMMENDED 相当に落着
#247Clarify Stream Creation default delivery method behaviorjischr4/1Transmitter が default delivery method(polling)をサポートしない場合の応答ガイダンスを追加。後方互換性を担保するためソフトな言い回しに調整
#239Revert "Issue-224: events_supported field added to .well-known/ssf-configuration..."tulshi4/15既に取り込まれていた events_supported フィールドを well-known エンドポイントから撤回。2/11 コールでの合意に基づき「v1 範囲外として v1 Final 後に再検討」
#246Adding some language for recommended stream configuration audience validationjischr4/24Stream Configuration レスポンス内 aud 値の検証ガイダンスを追加(Issue #207 対応)
#250Added language to ignore unknown fieldstulshi4/24「Receiver は理解できないイベントフィールドを無視すべき」を仕様文に明記(Issue #221 対応、4/15 コールでの合意に基づく)

PR #244 (Fixes #221 - Add event_metadata to CAEP and RISC, jischr) は 4 月コールで議論の末、4/22 コール後に クローズ(マージせずに撤回)された。代わりに metadata という名称への変更を含むより限定的な対応に切り替えられ、最終的に Issue #221 自体は PR #250 で「unknown fields を ignore する」一般則を入れる方向で着地した。

PR #248 (Update error table, appsdesh) は 4 月末時点で open のまま継続。エラー表と本文記述のどちらを「真実の源 (source of truth)」とするかという根本論点に関わるため、v1Final へ含めるか vFuture へ繰り越すかの判断が 4 月末まで保留された。

PR #245 (Clarify relationship between Transmitter and AS, jischr) は CAEP Interop Profile §2.7.1 の「Transmitter と OAuth Authorization Server の関係」記述の改善を狙ったもので、4 月中に appsdesh と tulshi からのレビューを受けた。当初は v1Final ラベルが付与されていたが、後に vFuture へ再分類された(実際のマージは 12/19)。


3. ミーティングと議論

Shared Signals WG は通常、火曜日 1pm-2pm EDT に定例コールを開催している。2025 年 4 月の開催状況は以下の通り:

日付種別状態
2025-04-01 (火)定例開催。9 名参加
2025-04-08 (火)定例キャンセル(IIW XL: 4/8-10 開催のため)
2025-04-15 (火)定例開催
2025-04-22 (火)定例開催
2025-04-29 (火)定例キャンセル(RSA Conference 2025: 4/28-5/1 出席のため共同議長不在)

3.1 2025-04-01 定例コール

参加者は Cisco・Disney・Workday・OIDF・Omnissa・SailPoint・Okta・Google などから 9 名(議事録 2025-04-01 より)。主要議題は 4 つの open PR と Issue クリーンアップであった。

主要議論:

  • PR #247(default delivery method の挙動)の文言強度: 当初の文言が後方互換性を損ねるという懸念から、MAYCAN のどちらを使うかが議論された。最終的に 非規範的(non-normative)な記述として、サポート外時には 400 エラーで応答する 旨の合意で着地。同日マージ。
  • PR #246(aud 検証): Transmitter と Receiver の間で aud の値をいつ・どう検証するかが論点。out-of-band の合意がある場合と、stream creation レスポンスから受信側が得る場合の双方を扱うと複雑化することが認識され、解決は持ち越し(実際には 4/24 マージ)。
  • PR #245(Transmitter / AS の関係): Interop Profile 内の関連箇所が「読み手にとって混乱を招く」と評され、Apoorva Deshpande と Jen Schreiber が文言改訂を共同で引き取ることで合意。
  • PR #244(event_metadata 追加): 「Thunderdome」と議事録に表現されるほど活発な議論。フィールドを subject ではなく event そのものを表すメタデータにする方針、or actions 文言の削除、JWT サイズと相互運用ガイダンスの懸念などが論点となった。
  • PR #225 のリバート方針: 2/11 コールで合意済みの events_supported を well-known から撤回する方針を再確認。Issue #202 のクローズも合わせて承認(具体的なリバート PR は 4/15 マージの #239)。

アクションアイテム: Apoorva と Jen が AS 関係文言の改稿、Issue #202 のクローズ。

「PR 244 は Thunderdome だった」(議事録 2025-04-01 より)

3.2 2025-04-08 コールのキャンセル

Atul Tulshibagwale は同日午前の ML 投稿 No call today で、「IIW のため、本日の WG コールはキャンセル。多くの常連参加者がそちらにいる」とアナウンスした。OIDF Operations の Mike Leszcz から同日中にカレンダー招集の正式キャンセル通知 (001843) が発出された。

IIW XL(Internet Identity Workshop, 第 40 回記念回, 2025-04-08〜10 開催)は SSF / CAEP のユースケースが議論される主要な業界フォーラムであり、WG 常連参加者の多くが現地参加するため、定例コールを成立させても議論が深まらないという判断であった。

3.3 2025-04-15 定例コール

参加者: Atul Tulshibagwale、Tushar Raibhandare (Google) ほか(議事録 2025-04-15 より)。

主要議題は (1) Event Data を SSF 仕様に含めるか、(2) Flow Control の 2 点であった。

  • Event Data を SSF 仕様に含めるか: 現状 event_data は CAEP と RISC の個別仕様に定義されているが、「SSF を継承する他仕様も使えるよう、SSF 本体に置くべき」という議論。SSF イベントを他仕様のスーパークラス(superclass)として位置付ける案や、events クレーム内にネストする案、独立した events_data フィールドを設ける案などが検討された。詳細仕様は v1.0 では含めず後送りとする一方で、「Receiver は理解できないイベントフィールドを無視すべき」というガイダンスを SSF 仕様に追加することで合意。これは PR #250 として 4/24 にマージされた。OAuth の拡張性原則とも整合する最小限のアプローチである。

  • Flow Control: Tushar Raibhandare が問題を提起。配信失敗時のデータ保持期間が未定義であり、特に push モードで Receiver がオフラインの場合、または pull の頻度が低い場合に問題となる。論点:

    • Transmitter が「どれだけイベントを溜め込んでよいか」のガイダンスが必要
    • Receiver が自分のトラフィック容量制約を Transmitter に伝える手段が必要
    • HTTP 429 ステータスコードでバックオフ要求を示せる
    • 優先度の異なるイベントを別ストリームで扱う複数ストリーム構成も有効

    推奨方針として「stream あたりのデータ上限言語を追加し、Receiver が優先度ごとに異なるストリームを割り当てるマルチストリーム構成を推奨する」方向性が示された。これに合わせて Tushar は同日 GitHub に Issue #249: Flow control を起票しなおして整理(実際の起票日は 4/3)、本 Issue は最終的に「v1 では vFuture ラベル付与のうえ open 継続」となり、5 月の PR #256 で MAY drop events のソフトな表現へ着地する道筋が定まった。

コール議事録は同日 18:04 UTC に Atul が ML へ Call notes として共有した。

3.4 2025-04-22 定例コール

主要議題は (1) PR #248(Error Table 整理)と (2) Stream Behavior(paused / disabled 時の応答)の 2 点(議事録 2025-04-22 より)。

  • Error Code Handling (PR #248): Stream verification 時のエラーコード論争。400406 のどちらを使うか、後方互換性を維持しつつ新コードを導入するかが焦点。George Fletcher は「createStream イベントが未サポートの場合に 406 を返す」案を提示。Sean O'Dell が 「新ステータスコードを導入したうえで、既存の 400 も Transmitter が送信できるよう許容する」 という後方互換戦略を提案し、これがコール内のコンセンサスとなった。George のコメントを PR #248 に取り込み、406 を新規ステータスとして追加する方向性が合意された。

  • Stream Behavior(paused / disabled): Shayne Miel が問題の核心を整理:

    イベントが flow していないケース(単にイベントがないだけ)と、イベントが flow できないケース(ポリシーにより)を区別する必要がある」(Shayne Miel, 議事録 2025-04-22 より)

    実装側の現状:

    • Shayne Miel: 「実装者は paused stream へのリクエストを単に無視している」
    • Sean O'Dell: 「disabled stream に対しては 403 ステータスを返している」

    WG は verification リクエストが disabled 状態を明示的に示すべきかを議論。Jen Schreiber が Issue #214(verification status code)を別 PR として切り出して担当することを引き受け、§6.1.2 の paused stream の期待挙動に関する文言更新がフォローアップ項目として登録された。

    時間的制約により、Final 化前にすべての未解決 issue を完全に解決することはできない」(Atul、議事録 2025-04-22 より)

PR #248 自体の v1Final 取り込みは見送り、verification のエッジケース整備は別 PR として 4/29 コール(後にキャンセル)への持ち越しとなった。

3.5 2025-04-29 コールのキャンセル

OIDF Operations の Mike Leszcz から同日中に Canceled event として「本日のコールは共同議長が RSA で不在のためキャンセル」と通知された。RSA Conference 2025(4/28-5/1 San Francisco)には SSF / CAEP の主要実装者・議長層が現地参加しており、対面議論を優先する判断であった。


4. メーリングリストの主要スレッド

openid-specs-risc ML のアーカイブは週次インデックス形式で提供されている。2025 年 4 月の状況:

アーカイブ週投稿数主な内容
Week-of-Mon-2025040734/8 コールキャンセル通知、Issue #221 コメント通知
Week-of-Mon-2025041444/15 Call notes、Issue #244 / #248 コメント通知
Week-of-Mon-20250421174/22 Call notes、Issue #248 を中心とした活発な GitHub 通知群、Issue #221 / #207 のクローズ通知
Week-of-Mon-2025042834/29 コールキャンセル通知、Issue #249 / #197 コメント通知

人手による技術投稿は call notes と 2 件のキャンセル通知に限られ、それ以外はすべて GitHub bot による issue / PR コメントの転送である。4 月の ML は 「コール議事録の共有」と「カンファレンス起因のキャンセル通知」 が中核を占め、実質的な技術議論はすべて GitHub と HackMD 議事録上で行われていた。

4.1 No call today - Atul Tulshibagwale, 2025-04-08 開始

4/8 のコール直前キャンセル通知。「IIW のため、本日の WG コールはキャンセル。常連参加者の多くがそちらにいる」と一行で告知。直後に Mike Leszcz の正式カレンダーキャンセル通知 (001843) が続いた。IIW XL は SSF / CAEP の実装者議論の主舞台として位置付けられており、定例コールよりも対面議論を優先する WG 運営の柔軟性が表れている。

4.2 Call notes (2025-04-15) - Atul Tulshibagwale, 2025-04-15 開始

4/15 コール直後の議事録共有。「event_data を SSF 本体に置くべきか」「Flow Control(Issue #249)」の 2 大議題と、コール内で合意した「Receiver は理解できないフィールドを無視する」方針(PR #250 として 4/24 マージへ繋がる)が要約されている。本投稿は PR #250 の根拠として後の PR 説明文に引用された。

4.3 Call notes (2025-04-22) - Atul Tulshibagwale, 2025-04-22 開始

4/22 コール直後の議事録共有。Error Code 整理(PR #248)の論点と、Shayne Miel の「イベントが flowing していないケースと flow できないケースを区別する必要」発言が整理されている。Atul 自身の「Final 化前に全 issue を完全解決することは時間的に困難」というコメントは、5 月の WG Last Call に向けた 「v1 範囲を絞り込み、vFuture へ繰り越す」運用方針 の伏線となった。

4.4 GitHub bot 経由の Issue #248 コメントスレッド(Week-of-Mon-20250421

4 月第 3 週は Issue #248(Error Table 整理)に関する PR コメント転送通知が ML 上で 7 件(001849, 001850, 001858, 001860, 001863, 001864, 001865)転送された。Issue #248 の議論は 4 月最後の週で最も活発な技術トピックとなり、「verification リクエストの扱いは v1Final から意図的に除外し、4/29 のコールで別途議論する」旨のコメント(001863)が記録されている。4/29 コールが結果的にキャンセルされたため、この議論は 5 月コールへ持ち越された。

4.5 Canceled event @ Tue Apr 29 - Mike Leszcz, 2025-04-29 開始

4/29 コールの当日キャンセル通知。「本日のコールは共同議長が RSA で不在のためキャンセル」と短く告知。RSA Conference 2025 は SSF の主要実装ベンダ(Cisco, SGNL, Okta, Google, Disney, SailPoint 等)が現地参加する大型カンファレンスで、議長層の不在によりコール成立が困難となった。


5. GitHub 上の議論

openid/sharedsignals リポジトリの 2025 年 4 月の活動:

  • Issue 新規起票: 1 件(#249)
  • PR 新規起票: 6 件(#246, #247, #248, #249 関連, #250, #251)
  • PR マージ: 5 件(#243, #246, #247, #239, #250)
  • Issue クローズ: #207, #221 など複数

4 月は 「v1Final へ繰り入れる修正の取り込み」と「vFuture / v2 へ繰り越す論点の切り分け」が並行して進む 月であった。新規起票された Issue #249(Flow control)は典型的な「v1 では vFuture ラベルで継続、v2 で本格対応」型のテーマとして位置付けられた。

5.1 openid/sharedsignals#249 — Flow control(新規起票)

  • author: traib-google (Tushar Raibhandare, Google)
  • 起票: 2025-04-03
  • 4 月末時点: open、ラベル vFuture

4 月最大の新規テーマ。「Transmitter は任意のレートでイベントを送信し、予測不可能にバッファリングできる。Receiver が一時的に不在のとき、イベントは破棄されうる。POLL ベースでも同様の懸念がある」という問題提起。PUSH モード・PULL モードそれぞれの非対称性を指摘し、buffering capacity / event retention duration / rate limits を metadata や stream config で「可視化 (visible)」すべきと提案。

4/15 コール(§3.3)で正式議論され、「MAY drop events のソフトな表現で当面の合意とし、より精緻な flow control メカニズムは v2 へ繰り越す」方針が固まった。Issue 自体は 4 月末時点で open のまま vFuture ラベル付与で継続。実際の仕様文への反映は 5 月の PR #256(Yair Sarig 起票、5/15 マージ)まで持ち越された。

5.2 openid/sharedsignals#244 — Fixes #221 - Add event_metadata to CAEP and RISC

  • author: jischr (Jen Schreiber, Workday)
  • 起票: 4 月上旬
  • 4/22 にクローズ

4/1 コールで「Thunderdome」と評された議論の中心。「Transmitter がイベント自体に関する補足情報を提供できるよう、CAEP と RISC に event_metadata フィールドを導入する」提案。

主要論点:

  • appsdesh (Apoorva Deshpande, Okta): 「action という用語の定義は何か」「メタデータの肥大化をどう防ぐか」「subject ベースの情報との区別を明確化すべき」
  • Sean O'Dell (Disney): 「フィールドはイベント自体に限定(siloed)すべきで、subject ベースの詳細を含めるべきでない。相関 ID (correlation IDs) や enriched metadata は検討に値するが、JWT サイズの肥大化は避けるべき」
  • レビュアー一般: 「キー名から冗長な event を削除すべき」→ event_metadatametadata にリネーム

最終的に 4/22 に jischr がクローズ。コメントには「サンプル追加を行わない決定は先のミーティングで合意済み」と記述され、本 PR の方向性は撤回された。Issue #221 自体は別途 PR #250(unknown fields を ignore する一般則)の方向で 4/24 にクローズされた。これは 「ピンポイント対応より一般的拡張性原則を取る」WG の設計哲学 が表れた事例である。

5.3 openid/sharedsignals#248 — Update error table

  • author: appsdesh (Apoorva Deshpande, Okta)
  • 起票: 2025-04-02
  • 4 月末時点: open(継続)

「PR #247 のフォローアップ」として、散在するエラーコード定義をエラー表に集約することを目的とした PR。jischr が「Looks good. Thanks for adding this to the table!」と当初承認したが、「規範的記述と表記載のどちらが真実の源 (source of truth) となるべきか」という根本論点に発展した。

論点の対立軸:

  • FragLegs (Shayne Miel, Cisco): 「既存テキストは MAY を使うが、エラー表のイントロは『Errors are signaled』と必須的に読める。表に任意エラーを追加すると後方互換性を破る恐れがある」
  • appsdesh: 「任意エラーを記述の中に埋もれさせると実装が困難。v1 リリース前に全体整合を取るべきで、後送りは妥当でない」
  • tulshi (Atul Tulshibagwale, SGNL): ラベル付け(spec:SSF, vFuture)のうえ、論点はより広い範囲に及ぶため別議論として扱うべきと判断

4/22 コール(§3.4)で再議論され、George Fletcher のコメント(406 を新規ステータスとして追加し、既存 400 も許容)を取り込む方向で部分合意。ただし verification リクエスト関連のエッジケースは v1Final に含めず別 PR(Issue #214 対応)として切り出すことに。本 PR 自体は 4 月末時点で open のまま継続し、4/29 コール(キャンセル)後の 5 月議論へ持ち越された。

5.4 openid/sharedsignals#250 — Added language to ignore unknown fields

  • author: tulshi (Atul Tulshibagwale, SGNL)
  • 起票: 4 月中旬
  • マージ: 2025-04-24

4/15 コール(§3.3)での合意に基づく PR。「Receiver は理解できないイベントフィールドを無視すべき」という OAuth 流の拡張性原則を SSF 本体に明記する。

PR description には「This was discussed in the WG meeting on April 15, 2025」と明記され、ML 投稿 Call notes (2025-04-15) が直接の根拠として参照された。FragLegs(4/22 承認)と iamseanodentity(4/24 承認「Looks good」)の 2 名がレビュー、4/24 マージ。Issue #221(Addition of Event data field inside events)が本 PR で同時にクローズ。

ラベルは v1Final。当初 PR #244 で目指された「event_metadata フィールドの追加」アプローチを撤回し、より一般的な「unknown fields を ignore する」原則で v1 範囲を絞り込んだ典型例。

5.5 openid/sharedsignals#239 — Revert "Issue-224: events_supported field added to .well-known/ssf-configuration..."

  • author: tulshi (Atul Tulshibagwale, SGNL)
  • マージ: 2025-04-15

既に取り込まれていた PR #225(events_supported フィールドを well-known エンドポイントに追加)を撤回する PR。「非破壊的な変更だった」と FragLegs はコメントしているが、2/11 コールでの合意に従って v1 範囲から除外し v1 Final 後の検討課題とする判断に基づく。v1Final ラベル付き。

これは v1 範囲を意識的に絞り込み、Final 化への道筋を最短化する WG の運用方針が表れた事例である。

5.6 openid/sharedsignals#246 — Stream configuration audience validation

  • author: jischr (Jen Schreiber, Workday)
  • マージ: 2025-04-24

Stream Configuration レスポンス内の aud 値検証ガイダンスを追加。著者自身が当初言語は「やや曖昧 (quite vague)」と認識しており、Receiver にとって実装可能な水準まで具体化することを目指した。tulshi・FragLegs・iamseanodentity の 3 名レビューを経てマージ、Issue #207 をクローズ。

5.7 openid/sharedsignals#247 — Clarify Stream Creation default delivery method behavior

  • author: jischr (Jen Schreiber, Workday)
  • マージ: 2025-04-01

Issue #149(default delivery method 未サポート時の挙動)への対応。後方互換性懸念から FragLegs が「言語を調整し、Tx が polling 未サポート時の応答についてはあくまで提案にとどめる」方向へ修正提案。iamseanodentity と FragLegs の承認を経て、4/1 コール直後にマージ。

5.8 openid/sharedsignals#243 — Poll endpoint should require authorization

  • author: jischr (Jen Schreiber, Workday)
  • マージ: 2025-04-01

Issue #208 への対応。SSF §7.1.1 に「Poll Endpoint には authorization が使用されるべき」と明記。文言強度は当初 SHOULD だったが、CAEP Interop Profile との整合を理由に MAY への弱化が提案された。著者は対案として RECOMMENDED 相当の表現を提示し、最終合意。FragLegs と iamseanodentity(「Ship it」)の承認を経て 4/1 マージ。


6. 関連イベント

6.1 IIW XL (Internet Identity Workshop, 第 40 回記念回, 2025-04-08〜10, Mountain View)

IIW XL は Computer History Museum で開催された記念回で、SSF / CAEP のユースケース議論や実装者間の対面ディスカッションが行われた重要な業界フォーラム。SSF WG はこの期間中の 4/8 定例コールを「多くの常連参加者が IIW にいるため」キャンセルした。これは IIW を SSF WG にとっての主要なオフライン議論の場として尊重する WG 運営方針が表れた措置である。IIW での議論内容は WG コールの議事録には直接反映されておらず、参加者個別のフィードバックとして 4/15 以降の議論に間接的に影響したと推察される。

6.2 RSA Conference 2025 (2025-04-28〜2025-05-01, San Francisco)

RSA Conference 2025 は SSF の主要実装ベンダ(Cisco, SGNL, Okta, Google, Disney, SailPoint 等)が現地参加する大型セキュリティカンファレンス。SSF WG はこの期間中の 4/29 定例コールを「共同議長が RSA で不在のため」キャンセルした。RSA 期間中は SSF / CAEP の商業的展開や潜在的な相互運用デモが議論される機会であり、WG メンバーの企業活動を優先する運営判断である。

6.3 「v1Final へのアプローチ」というメタコンテクスト

4 月の WG 活動を通底するのは「v1Final 化に向けた範囲絞り込み」というメタ的なコンテクストである。PR #239 のリバート、PR #244 の撤回、Issue #249 の vFuture ラベル付与、PR #248 のエッジケース除外などはいずれも、「v1 で全てを完璧に解決するのではなく、コアな相互運用性を担保した最小限で Final 化し、残りは v2 / vFuture で扱う」という戦略の現れである。この方針は翌 5 月の WG Last Call 発出(5/19)と OIDF Public Review プロセス起動(6 月)へ直接繋がる前提整備となった。


7. 今後の予定(2025 年 4 月末時点の視点)

4 月末時点(当時の視点)で予定されていた次月以降の動き:

  • 5 月の毎週定例コール継続: 5/6・5/13・5/20・5/27 の 4 回が予定通り開催される見込み
  • Issue #249(Flow control)の暫定対応: 「MAY drop events のソフトな表現」を盛り込む PR を起票し、v1 では vFuture ラベルで継続
  • PR #248(Error Table)の最終判断: v1Final に含めるかの判断を 5 月コールで実施
  • PR #244 の撤回を踏まえた Issue #221 の最終クローズ: PR #250 のマージ(4/24 達成済み)で完了
  • Identiverse 2025 (6/3-6 Las Vegas) を見据えた WG Last Call の準備: 5 月後半に Last Call を発出し、6 月の OIDF Public Review プロセス起動を視野
  • Issue #214(verification status code)の別 PR 切り出し: Jen Schreiber 担当
  • CAEP Interop Profile §2.7.1 の Transmitter / AS 関係文言改稿: Apoorva Deshpande と Jen Schreiber が共同作業継続

5 月以降は「WG Last Call 発出 → OIDF Public Review → Identiverse 2025 でのアウトリーチ」という Final 化への明確な工程に入る前提が、4 月の地道な範囲絞り込み作業によって整えられた格好である。


8. 参考情報源

議事録

メーリングリスト

GitHub

公式