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OpenID Foundation MODRNA WG 活動レポート (2024年6月)

執筆日: 2026-05-21(遡及執筆)。本記事は 2024 年 6 月の MODRNA WG 活動を、約 1 年 11 ヶ月後の視点から openid-specs-mobile-profile メーリングリストの公開アーカイブ、openid.net 上の公開情報、および同月前後の OpenID Foundation 全体・隣接 WG・関連業界イベントの公表記録をもとに再構成したものである。MODRNA WG の議事録は non-public 運用のため、コール内の詳細議論は公開チャネル上には残っておらず、本記事は ML アーカイブから読み取れる範囲の運用記録の整理を主としている。

1. 概要

MODRNA (Mobile Operator Discovery, Registration, & autheNticAtion) WG は、モバイルネットワークオペレータ (MNO) が OpenID Connect / OAuth 2.0 をベースに GSMA Mobile Connect 互換のアイデンティティサービスを提供するための相互運用プロファイルを策定する OpenID Foundation のワーキンググループである。共同議長は Bjorn Hjelm と John Bradley (Yubico) の 2 名、定例コールは隔週火曜 14:00-15:00 UTC(7:00-8:00 PDT、CEST 16:00)のカデンスで運営され、議事録は non-public、仕様ソースは bitbucket.org/openid/mobile/src/master/ で管理されている(github.com/openid/ 配下に MODRNA WG の公式リポジトリは存在しない)。

2024 年 6 月の MODRNA WG は、公開チャネル上ではきわめて静かな月であったが、本月の沈黙には 明確に外部イベントに起因する事情 がある。openid-specs-mobile-profile の公開アーカイブで本月にエントリが生成された週は Week-of-Mon-20240603 の 1 週のみで、合計投稿数は 2 通、いずれも共同議長 Bjorn Hjelm からの 6 月 4 日 (火) 定例コールの事前キャンセル通知 である。

隔週火曜カデンス上、本月の定例コール候補日は 6 月 4 日 (火) と 6 月 18 日 (火) の 2 回である。6 月 4 日は EIC (European Identity Conference) 2024 開催と重なるため事前キャンセルが ML 上で告知され、6 月 18 日については ML 上にアジェンダ投稿・キャンセル通知のいずれも観測されず、開催・キャンセルのどちらであるかは公開チャネルからは確定できない。

本月の MODRNA 仕様群に関する新規ドラフト改訂・パブリックレビュー・Notice of Vote のアナウンスは ML・openid.net/tag/modrna/ のいずれにも存在しない。公開チャネルで観測できる MODRNA 固有の技術議論スレッドは月内ゼロであり、openid.net/tag/modrna/ 配下にも 2024 年 6 月付の MODRNA 固有アナウンスは存在しない。

OpenID Foundation 全体としては、本月は (i) 5/28-31 開催の Identiverse 2024 (Las Vegas) 直後の月、(ii) 6/4-7 開催の EIC 2024 (Berlin)、(iii) 6/2 公表の OpenID Federation 1.0 第 4 Implementer's Draft Public Review 開始(6/1〜7/16 の 45 日間、AB/Connect WG 提出)、(iv) 6/18 公表の OIDF Executive Director Gail Hodges による G20 Digital Government and Inclusion Workshop 登壇("Digital Identity at the G20")、(v) 6/27 公表の Shared Signals WG 3 件 Implementer's Drafts Public Review 開始 と、Foundation 全体としては並走する Federation・Shared Signals・国際政策エンゲージメント の各プロセスが進行する密度の高い月であった。これらのいずれも MODRNA ML へのクロスポストは観測されない。

本月は、後の 7 月(7/30 標準 8 項目アジェンダ)、8 月(8/13 同テンプレート踏襲、8 項目テンプレートの最後の使用例)、9 月(9/19 Antitrust Statement 運用化、9/24 アジェンダで第 2 項目組み込み)、10 月(10/28 OIDF Hybrid Workshop での 5 分枠 WG Update、IPR/Process Document 改訂の Membership Vote 承認受信)、11〜12 月の連続キャンセル運用、2025 年 1 月下旬の IETF OAuth interim を経て CIBA Core 1.0 errata 1 draft (-06) 公開へと至る一連の流れの 最も前段 に位置する月である。

2. 公開された仕様・ドラフト改訂

2024 年 6 月中に MODRNA WG 名義で 新規のドラフト改訂アナウンス・パブリックレビュー告知・Notice of Vote は ML・openid.net/tag/modrna/ のいずれにも投稿されていない。MODRNA WG が保守する主要仕様群のステータスは、6 月末時点で以下のとおりであり、これは翌 7 月末・8 月末・9 月末時点と同一である。

仕様ステータス
OpenID Connect Client Initiated Backchannel Authentication – CoreFinal (2021-09)
OpenID Connect MODRNA Authentication ProfileImplementer's Draft 1
OpenID Connect Account PortingImplementer's Draft 1
OpenID Connect User Questioning APIImplementer's Draft 2
OpenID Connect MODRNA Discovery ProfileWorking Draft
OpenID Connect MODRNA Registration ProfileWorking Draft
Client Initiated Backchannel Authentication Profile (MODRNA 版)Working Draft

隣接 WG・Foundation 全体動向(参考、MODRNA 直接関与なし)

本月の MODRNA WG 固有の仕様改訂はないが、Foundation 全体としては以下の動きが進行していた。これらは MODRNA ML へのクロスポスト・言及はなされておらず、後の 7/30 コール「External Organizations」「Events」項目下で口頭共有された可能性が考えられる事項群である。

  • OpenID Federation 1.0 第 4 Implementer's Draft Public Review 開始(2024-06-02 公表): AB/Connect WG が OpenID Federation 1.0 仕様の第 4 Implementer's Draft を提出。Public Review 期間は 6/1〜7/16 の 45 日間、Notice of Vote は 7/3、Early Voting は 7/10、正式投票期間は 7/17〜7/24 の 7 日間と告知。レビュー参加は AB/Connect WG ML (openid-specs-ab@lists.openid.net) 経由。MODRNA 仕様群との直接の交差はないが、Federation の Trust Chain と Trust Mark を組み合わせる枠組みは、将来的に Mobile Connect エコシステムにおける Operator-issued Federation Statement にも応用余地のあるプロセスである
  • Shared Signals WG 3 件 Implementer's Drafts Public Review 開始(2024-06-27 公表): Shared Signals WG が CAEP・RISC・SSF を含む 3 件の Implementer's Drafts について Public Review を開始。投票通知(Notice of Vote)は翌月以降に発出される予定(実際には 7 月中に公表、投票期間は 8/5〜8/19)。MODRNA との直接接点はないが、Foundation 全体としての Final 化 / ID プロセスが並走する月であった
  • G20 Digital Government and Inclusion Workshop でのエグゼクティブ登壇(2024-06-18): OIDF Executive Director Gail Hodges が G20 のサイドイベントである "Digital Government and Inclusion Workshop" にて "Digital Identity at the G20" 演題で登壇。デジタルアイデンティティを Global Public Good と位置づけ、グローバルなオープン標準(OpenID Connect および FAPI)がローカル仕様によるベンダーロックイン・セキュリティリスクを回避することを主張。SIDI Hub (Sustainable and Interoperable Digital Identity HUB) 構想の文脈で 25 以上の国と複数ステークホルダーが取り組むクロスボーダー相互運用性の議論にも言及。MODRNA 固有の言及はなされていないが、Mobile Connect / 3GPP / GSMA との接点を持つ MODRNA WG にとって、Foundation のグローバルポリシー エンゲージメントの方向性を示す注目すべき発信であった
  • CAMARA プロジェクトの Meta-Release Fall24 準備期間: Linux Foundation 配下の Telco API Alliance である CAMARA プロジェクトが、後の 9 月 16 日に予定する初の正式メタリリースに向けて 25 API(13 サブプロジェクト)の品質検証・統合作業を進めていた期間。CAMARA 内部では「Security and Interoperability Profile based on OAuth 2.0 and OpenID standards」という方針が確定済みであり、MODRNA WG の対象領域(CIBA Core、MODRNA Authentication Profile)は CAMARA の API セキュリティ層と密接に関わる。OpenID Foundation は 2023 年 11 月以来 Associate Member として参加

3. ミーティングと議論

MODRNA WG の議事録は non-public 運用のため、定例コールの議題詳細・参加者・決定事項は公開されていない。隔週火曜カデンスから定まる 6 月の定例コール候補日と、ML 公開記録から読み取れる開催状況は以下のとおりである。

日付コール候補公開記録
2024-06-04 (火)定例Bjorn Hjelm より 6/4 13:58 UTC にキャンセル リマインダ投稿、続けて 15:03 UTC に Google カレンダー取消通知。EIC 2024 を理由に事前キャンセル
2024-06-18 (火)定例ML 上にアジェンダ投稿・キャンセル通知・カレンダー取消通知いずれも観測されず。公開チャネルからは開催・キャンセルの確定不能

6 月 4 日コール: EIC 2024 を理由とする事前キャンセル

2024-06-04 13:58:51 UTC(火曜日)、共同議長 Bjorn Hjelm から「REMINDER - MODRNA WG Call Canceled Today」と題したキャンセル リマインダが ML に投稿された(Week-of-Mon-20240603/001959.html)。本文は次のとおり短く、キャンセル理由を明示している。

As discussed at the last call, this is a reminder that today's MODRNA WG call is canceled because of the EIC conference this week.

(前回コールで議論したとおり、本日の MODRNA WG コールは今週の EIC カンファレンスのためキャンセルされる、というリマインダです。)

ここで言及されている "EIC conference this week" は、6/4〜7 にベルリンの BCC (Berlin Congress Center) で開催された KuppingerCole 主催の European Identity and Cloud Conference 2024(第 17 回 EIC、1,500 名以上の delegates が参加)を指す。MODRNA WG のコアメンバーは欧州モバイル オペレータ(Deutsche Telekom、Telefónica 等)および GSMA 関係者を含み、欧州時間と重なる EIC 開催週は MODRNA WG の中核参加者の主要 IAM ベンダー・MNO 関係者が現地参加するため、定例コールを開催しても定足を得られない見込みであった。"As discussed at the last call" との文言から、本キャンセルは少なくとも前回の隔週コール(2024-05-21 火が候補日、ただし ML 上にアジェンダ・キャンセル通知のいずれも観測されない)の場で口頭合意済みであったことがうかがえる。前回コールについて ML 上に公開痕跡がないこと自体は MODRNA WG の常態(議事録 non-public)であり、事前合意の内容が公開チャネル上に残らないこともこの WG の運用に整合する。

続けて 2024-06-04 15:03:03 UTC、Hjelm から「Canceled event: MODRNA WG @ Tue Jun 4, 2024 7am - 8am (PDT)」と題した Google カレンダー取消通知が ML に転送された(Week-of-Mon-20240603/001960.html)。本通知は MODRNA WG コール定例イベントが太平洋時間 7:00-8:00 で運用されていること、Zoom リンクが配布されていたこと、招待者リストに Cisco / T-Mobile / Deutsche Telekom / OpenID Foundation からの代表者が含まれていたことを示している。これは MODRNA WG の中核参加者の所属が、北米(Verizon・Cisco・T-Mobile)と欧州(Deutsche Telekom)の MNO・ベンダー、および OIDF スタッフを軸に構成されていることの公開チャネル上の確認材料となる。

6 月 18 日コール候補日: ML 上に告知なし

6 月 18 日(火)は隔週カデンス上の定例コール候補日にあたるが、本日付前後の openid-specs-mobile-profile ML アーカイブには、(i) Hjelm からのアジェンダ投稿、(ii) コールキャンセル リマインダ、(iii) Google カレンダー取消通知、(iv) 議事サマリ、のいずれも存在しない。6/17-23 週の週次インデックス HTML は生成されておらず、これは pipermail の挙動上「当該週の ML 投稿ゼロ」を意味する。

このため 6/18 コールが (a) 開催されたが Hjelm がアジェンダ ML 周知を省略した、(b) 静粛にキャンセルされた、(c) 開催されたが議事サマリ ML 共有が後続月と同様に行われなかった、のいずれであるかは公開チャネルからは確定できない。直前 6/4 コールが EIC 2024 を理由に事前キャンセルされたパターンと、後続 7/30 コールが当日アジェンダ ML 投稿付きで運用されているパターンを照合すると、本日は コール候補日であるが ML 周知のなされなかった日 に該当する。EIC 2024(6/4-7)の出張余波および北半球の夏休み入り直前の慣行的低密度回・キャンセル回のいずれかであった可能性が示唆されるが、これは推定であり議事録 non-public 運用下では確証できない。

公開議論の状況

6 月中に MODRNA ML 上で技術議論が交わされたスレッドは ゼロ である。Bitbucket Issue Tracker 側の新規起票・議論再燃の通知も ML には流れていない。本来、議事録 non-public の MODRNA WG では ML と Bitbucket Issue から議論を再構成するのが代替手段となるが、6 月はそのいずれにおいても再構成可能な技術議論ストリームが公開チャネルに観測されない月となった。

これは MODRNA WG が活動を停止していたという意味ではなく、(i) 6/4 コールが EIC 2024 を理由に明示的にキャンセルされ、(ii) 6/18 コール候補日が ML 上では存在感を残さず、(iii) 月内に新規仕様改訂イベントが発生しなかった、(iv) MODRNA WG コアメンバーの 6 月中の関心が EIC 2024 現地参加および隣接 WG(AB/Connect の Federation 第 4 ID Public Review、Shared Signals の 3 件 Public Review 準備)に分散していた可能性が高い、という複数要因の重なりによる「公開チャネル上の沈黙」である。実質的な月内成果は 6/4 コールキャンセル通知 2 通 に集約される。

4. メーリングリストの主要スレッド

2024 年 6 月の openid-specs-mobile-profile の週次アーカイブ生成状況と投稿内訳は以下のとおり。

アーカイブ週投稿数主な内容
Week-of-Mon-202405062Hjelm の 5/7 コールキャンセル リマインダ + Google カレンダー取消通知(参考、5 月分)
Week-of-Mon-202405130週次インデックス HTML 未生成(5/13〜5/19 に投稿ゼロ)
Week-of-Mon-202405200週次インデックス HTML 未生成(5/20〜5/26 に投稿ゼロ。5/21 隔週コール候補日も ML 上の動きなし)
Week-of-Mon-202405270週次インデックス HTML 未生成(5/27〜6/2 に投稿ゼロ。Identiverse 2024 開催週 5/28-31 と重なる)
Week-of-Mon-202406032Hjelm の 6/4 コールキャンセル リマインダ + Google カレンダー取消通知(EIC 2024 起因)
Week-of-Mon-202406100週次インデックス HTML 未生成(6/10〜6/16 に投稿ゼロ。EIC 2024 後半 6/4-7 と直後週)
Week-of-Mon-202406170週次インデックス HTML 未生成(6/17〜6/23 に投稿ゼロ。6/18 隔週コール候補日も ML 上の動きなし)
Week-of-Mon-202406240週次インデックス HTML 未生成(6/24〜6/30 に投稿ゼロ)

「3〜5 本選定」の対象となる技術議論スレッドは本月には存在しないため、本節では運用通知 2 件のみを紹介する。

1. REMINDER - MODRNA WG Call Canceled Today (2024-06-04)

EIC 2024 (6/4-7、Berlin) を理由とする 6/4 定例コールの事前キャンセル リマインダ。本文は 1 文("As discussed at the last call, this is a reminder that today's MODRNA WG call is canceled because of the EIC conference this week.")で、前回コール(隔週カデンス上では 5/21 火が候補日)で既に口頭合意済みであった旨を明記している。本投稿への ML 上の返信・代替日程の提案は寄せられていない。

本キャンセルは MODRNA WG の運用慣行として、定例コール候補日が主要な外部 IAM イベント(EIC・Identiverse・IETF・IIW)と重なる場合には事前キャンセルとする方針が暗黙に確立していることを示す事例の 1 つである。この方針は、後の 10/22 コール(11/19 アジェンダ準備優先で事前合意キャンセル)、11/5 コール(11/19 への前倒し合意で事前キャンセル)等の運用にも踏襲される。

2. Canceled event: MODRNA WG @ Tue Jun 4, 2024 7am - 8am (PDT) (2024-06-04)

Google カレンダーからの自動キャンセル通知の ML 転送。本通知は (a) MODRNA WG 定例コールが太平洋時間 7:00-8:00 (= 14:00-15:00 UTC、CEST 16:00-17:00) で運用されていること、(b) Zoom リンクが招待リンクに含まれていたこと、(c) 招待者リストに Cisco / T-Mobile / Deutsche Telekom / OpenID Foundation からの代表者が含まれていたこと、を公開チャネル上の事実として残している。MODRNA WG コアメンバーの所属の輪郭が公開チャネル上で確認できる数少ない記録であり、北米(Cisco・T-Mobile・Verizon)と欧州(Deutsche Telekom)の MNO・ベンダー軸が WG の議論を担っていることを示す材料となる。

その他

上記 2 通以外の投稿は 6 月中の MODRNA ML には存在しない。隣接 WG・Foundation 全体からのクロスポスト・転送投稿(6/2 OpenID Federation 第 4 ID Public Review 開始、6/18 Gail Hodges の G20 登壇、6/27 Shared Signals 3 件 Public Review 開始)も本月の MODRNA ML には届いておらず、本 ML に閉じた情報源のみを購読する WG メンバーは Foundation 全体・隣接 WG プロセスを把握できない状態にあった。

5. GitHub 上の議論

MODRNA WG の仕様ソースは GitHub ではなく Bitbucket Cloud (bitbucket.org/openid/mobile/src/master/) で管理されている。GitHub 側に MODRNA WG の公式一次リポジトリは存在しない(github.com/openid/MODRNA といった誤記が一部で見られるが、そのようなリポジトリは現存しない)。

Bitbucket Cloud は SPA 描画のため外部からのクローリングに適さず、本稿の調査範囲では 6 月中の Bitbucket Issue / PR / コミット活動の網羅的件数を確認できない。ただし、MODRNA WG の ML 上で 6 月中に Bitbucket 由来の新規 Issue / PR 起票通知が一切流れていない ことから、Issue Tracker 側でも目立った新規動作はなかったと推定できる(Issue Tracker での新規起票や活発な議論再燃があれば、議長 Hjelm が後続コールのアジェンダ「Issue Tracker」項目に具体的な Issue 番号を併記するか、別途 ML に告知する運用が後続月で観測されているため)。

なお、Atlassian による Bitbucket Cloud Issues / Wiki の 2026-08-20 完全廃止アナウンスは本時点では未公表であり(2026 年 3 月公表)、MODRNA WG として Issue Tracker 代替候補を検討する動きは本月の公開チャネルには存在しない。後の 2025 年 1 月 30 日に Mike Jones が MODRNA ML から存在を明示することになる PR #18 (bitbucket.org/openid/mobile/pull-requests/18、CIBA Core 1.0 → errata 1 draft の差分、編集者 Joe DeCock) も、6 月時点では公開チャネルから存在が確認できず、その伏線となる IETF OAuth interim (interim-2025-oauth-04) もまだ 7 ヶ月以上先の予定にすら入っていない。

6. 関連イベント

EIC (European Identity and Cloud Conference) 2024(2024-06-04 〜 2024-06-07、Berlin)

本月の MODRNA WG の運用に 最も直接的に影響を与えた外部イベント が、ベルリンの BCC で開催された KuppingerCole 主催の European Identity and Cloud Conference 2024 である。第 17 回となる本会議には世界中から 1,500 名以上の delegates(C-suite IAM リーダー、サイバーセキュリティ専門家、企業・中堅市場の関係者)が参加し、ハイブリッド形式で実施された。

MODRNA WG の 6/4 定例コールが EIC を理由に事前キャンセルされたのは前述のとおり。EIC は欧州 IAM コミュニティの最大級の年次イベントであり、欧州 MNO・GSMA 関係者・OIDF 役員が同会期中はベルリン現地に集中することから、MODRNA WG の中核参加者にとって 6 月第 1 週の定例コールは事実上開催不能となる構造的事情がある。

Bjorn Hjelm 本人を含む MODRNA WG コアメンバーの EIC 2024 セッション登壇情報は公開チャネル上では追跡できていないが、MODRNA WG / Mobile Connect の WG Update セッションが EIC で実施される慣行は過去(EIC 2022 等)にも観測されており、本 2024 年も同様の場で口頭情報共有がなされた蓋然性は高い。

Identiverse 2024(2024-05-28 〜 2024-05-31、Las Vegas、参考)

本月直前の 5 月末に ARIA Resort & Casino, Las Vegas で開催された Identiverse 第 15 回。2,500 名以上のアイデンティティ セキュリティ専門家が参加。OpenID Foundation 関連セッションとしては "10 years of OpenID Connect"、"The Work of the OpenID Foundation"、"OpenID for Verifiable Presentations"、"OIDC4SSI / SIOP v2 / OIDC4VP / OIDC4VCI" 等が実施された。MODRNA WG 固有のセッションは公開チャネルからは特定できないが、本会議直後の 6/4 MODRNA WG コールが EIC 2024 を理由にキャンセルされたタイミングは、Identiverse → EIC と続く 2 大 IAM カンファレンスへの参加が MODRNA WG コアメンバーの 6 月上旬日程を圧迫していたことを示唆する。

OpenID Federation 1.0 第 4 Implementer's Draft Public Review 開始(2024-06-02)

§2 で詳述。AB/Connect WG が OpenID Federation 1.0 仕様の第 4 Implementer's Draft を提出し、6/1〜7/16 の 45 日 Public Review が開始。Notice of Vote は 7/3、正式投票期間は 7/17〜7/24、後の 7/24 に承認される。MODRNA 仕様群との直接の交差はないが、Foundation 全体としては本月最大の Federation プロセス進行イベント。

Gail Hodges G20 Digital Government and Inclusion Workshop 登壇(2024-06-18)

§2 で詳述。OIDF Executive Director Gail Hodges が G20 のサイドイベント "Digital Government and Inclusion Workshop" にて "Digital Identity at the G20" 演題で登壇。デジタルアイデンティティを Global Public Good と位置づけ、OpenID Connect(30 億人以上利用)と FAPI に支えられるグローバルなオープン標準アプローチを主張し、SIDI Hub(25 ヶ国以上が参加するクロスボーダー相互運用性イニシアチブ)の文脈で国境を越えた貿易・教育/雇用証明書ポータビリティ・難民書類・国際銀行アクセスのユースケースに言及。MODRNA WG 固有の言及はないが、Mobile Connect / 3GPP / GSMA との接点を持つ MODRNA WG にとって、Foundation のグローバルポリシー エンゲージメントの方向性を示す注目すべき発信であった。

Shared Signals WG 3 件 Implementer's Drafts Public Review 開始(2024-06-27)

Shared Signals WG が CAEP・RISC・SSF を含む 3 件の Implementer's Drafts について Public Review を開始。Notice of Vote は翌 7 月中に公表予定。MODRNA WG との直接接点はないが、Foundation 全体としては並走する ID プロセスが密度高く流れていた月。

CAMARA Meta-Release Fall24 リリース準備期間

§2 で詳述。9 月 16 日に予定される CAMARA 初の正式メタリリースに向けた品質検証・統合作業期間。本 6 月時点で「Security and Interoperability Profile based on OAuth 2.0 and OpenID standards」方針は CAMARA 内部で確定済み。本月の MODRNA ML 上で CAMARA への明示的なクロスポスト・言及はなされていないが、EIC 2024 開催週中に MODRNA WG コアメンバーが GSMA / CAMARA 関係者と現地でロビー交流した蓋然性は考えられる。

7. 今後の予定(2024 年 6 月末時点の視点)

6 月末時点の公開情報からは、MODRNA WG の 7 月以降の明示的な予定は ML・openid.net いずれにも掲載されていない。隔週カデンスと月内事象から推定される事項は以下のとおり。

  • 定例コール: 隔週火曜サイクル(6/4 キャンセル、6/18 候補日不明)に従えば、7 月の候補日は 7 月 2 日(火)と 7 月 16 日(火)と 7 月 30 日(火)の 3 回。独立記念日(7/4 木)週を挟む 7/2 と、IETF 120 Vancouver(7/20-26)直前週の 7/16 は静かに運用される可能性、7/30 は標準 8 項目アジェンダの ML 周知付きで開催される見込み — 結果としてこの見込みは 7/30 アジェンダ投稿として実現する
  • OpenID Federation 1.0 第 4 ID 投票期間: 6/2 開始の Public Review が 7/16 に終了し、7/17〜7/24 が正式投票期間。MODRNA WG メンバーは OIDF メンバーシップ単位での投票通知を受け取る立場にあるが、MODRNA WG として組織的に投票連絡を行う運用はとられていない
  • IETF 120 Vancouver(7/20-26): 北米 IAM 関係者の主要関心事項。MODRNA WG コアメンバー(Bjorn Hjelm / John Bradley 等)の現地参加は通例であり、本会期中の OAuth セッション動向は MODRNA 仕様群の将来改訂に潜在的に影響する
  • Shared Signals 3 件 ID Notice of Vote 発出予定: 6/27 開始の Public Review に続き、Notice of Vote が 7 月中に発出予定。投票期間は 8 月上旬と見込まれる
  • CAMARA Meta-Release Fall24(9/16 予定): OAuth 2.0 / OpenID 標準ベースのセキュリティプロファイルを伴う初の正式メタリリースが 9 月予定。MODRNA WG 仕様群(CIBA Core、MODRNA Authentication Profile)の CAMARA セキュリティプロファイル仕様への参照標準としての位置づけが進む可能性
  • Implementer's Draft 群の現状維持: MODRNA Authentication Profile ID1 / Account Porting ID1 / User Questioning API ID2 はいずれも次版改訂の公式アナウンスがなく、現行ステータスを維持

6 月の対外可視な活動は (i) 議長 1 名による 6/4 コールキャンセル運用通知 2 通、(ii) 6/18 候補日のサイレント運用、の 2 件に集約される。当時の読者にとっては「EIC 2024 開催に伴うキャンセルで始まり、北半球の夏休み入り直前の静かな運用月」として記憶される月であり、後の月から振り返ると、本月は 7 月の同様の静寂月、8 月の 8 項目テンプレート踏襲、9 月の Antitrust Statement 運用化、10 月の OIDF Hybrid Workshop での 5 分枠 WG Update 発表、Foundation ガバナンス改訂受信、11〜12 月の連続キャンセル運用、2025 年 1 月下旬の IETF OAuth interim を経て CIBA Core errata 1 draft 公開へと至る一連の流れの 最も静かな前段 として位置づけられる。

8. 参考情報源