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OpenID Foundation R&E WG 活動レポート (2025年4月)

執筆日: 2026-05-18(遡及執筆)

1. 概要

R&E WG(Research and Education Working Group)は、研究・教育(R&E)セクターにおける OpenID Connect の採用を促進するため、R&E セクター向け OpenID Connect プロファイル・R&E 固有のクレームとスコープ・エンティティメタデータ拡張を策定することを目的とした OpenID Foundation のワーキンググループである。WG 議長は Davide Vaghetti(GARR)が務め、議事録は伝統的に非公開(non-public)、公式 GitHub リポジトリも存在しないため、当 WG 自身の対外可視性は構造的に低い。

2025 年 4 月の R&E WG は、OIDF 公式 ML openid-specs-rande の公開アーカイブに新規エントリゼロ という従来からの沈黙状態を継続した一方、R&E コミュニティ自身が直接関与する 2 つの重要イベント が月内に重なった月であった。具体的には:

  • TIIME Unconference 2025(4 月 1〜3 日、英国 University of Reading)で R&E コミュニティが OpenID Federation 関連の複数のブレイクアウトセッションを開催
  • OpenID Federation Interop Event(4 月 28〜30 日、スウェーデン Stockholm の SUNET オフィス)に R&E セクターの中核ネットワーク事業者である SUNET が会場ホストを務め、Roland Hedberg を含む R&E 系実装者が参加

また同月 4 月 7 日には Spring 2025 IIW 直前の OIDF Hybrid Workshop(Google Sunnyvale)、4 月 8〜10 日に IIW XL(第 40 回) が開催されており、R&E コミュニティが採用基盤として注視する OpenID Federation の仕様改善・実装相互運用が大きく前進した月にあたる。

本レポートは、R&E WG 単体の公式公開アウトプットが乏しかった事実を率直に記述しつつ、R&E コミュニティの隣接する公開チャネル(TIIME 2025 セッションスケジュール、SUNET Interop 報告、OIDF 公式アナウンス)に残された記録から、2025 年 4 月における R&E 領域の動きを再構成する。


2. 公開された仕様・ドラフト改訂

R&E WG の公式ドラフト

R&E WG の仕様一覧(openid.net/wg/rande/specifications)における 4 月末時点のステータスは以下のとおりで、当月中に新規 Editor's Draft / Implementer's Draft / Final 化等の公開アクションは確認できなかった。

カテゴリステータス
Final SpecificationsNone yet.
Implementer's DraftsNone yet.
DraftsNone yet.

WG チャーターが掲げる成果物(R&E セクター向け OpenID Connect プロファイル・R&E 固有クレーム/スコープ・エンティティメタデータ拡張)は、いずれも 4 月時点で OIDF 公式の公開ドラフト段階に達していない。R&E 向けプロファイル整備の実作業は、後の REFEDS PORE(Profiling OpenID Federation for Research and Education)Working Group 等の隣接コミュニティに重心が置かれていく構造が、この時点で既に観測される。

R&E が採用基盤とする OpenID Federation の改訂動向

R&E WG の仕様策定は OpenID Federation を信頼基盤として前提しているため、Federation 本体の改訂動向は当 WG にとって不可欠の文脈となる。2025 年 4 月の Federation 本体については、月末の SUNET Interop で 40 件のオープン Issue が議論され、その後 17 件まで縮減される結果につながった(Mike Jones による事後報告)。Interop 直後の修正を取り込んだ draft 43 は 5 月初頭に公開されており、4 月時点では Interop での合意事項を本文に反映する作業が進行中であった。

OIDF 全体のニュース欄(openid.net/news/)における 4 月の R&E 関連アナウンスは確認できない。


3. ミーティングと議論

R&E WG の定例コール議事録は伝統的に non-public 運用であり、2025 年 4 月の定例コール開催日・参加者・議論内容は公開されていない。openid.net/wg/rande/ のミーティング欄も「–」表示で、定例の頻度は不定とされている。

そのため、本節では R&E コミュニティが 4 月中に表に出した議論の場を、TIIME 2025・SUNET Interop・OIDF Workshop / IIW を順に整理する。

TIIME Unconference 2025(4 月 1〜3 日、英国 University of Reading)

TIIME(Trust and Internet Identity Meeting Europe)は R&E アイデンティティコミュニティの中心的なアンカンファレンスで、2025 年版は 4 月 1〜3 日に University of Reading で開催された。前日 3 月 31 日には 20th FIM4R Workshop(Federated Identity Management for Research)が併催され、研究インフラの FIM 要件についての議論が R&E コミュニティ内で先行して行われた上で、TIIME 本体に合流する構成であった。

TIIME 2025 では、R&E WG の関心領域に直接重なるブレイクアウトセッションが複数開催された。公開セッションリスト(tiime-unconference.eu/sessions-2025)から、OpenID Federation / R&E 関連の主要セッションのみ抽出すると以下のとおり。

Day 1(4 月 2 日)

  • キーノート: "Does trust still matter? – Challenges and opportunities that the R&E community are facing in delivering identity infrastructures at scale"(Licia Florio / NORDUnet)
  • "Enable Vanilla OIDC RPs for OIDFed" — 既存の OpenID Connect RP を OpenID Federation トラストチェーン下で動作させる手法の議論
  • "OpenID Fed topologies" — トラストアンカー配置・複数アンカー併用パターンの設計議論
  • "OpenID Federation business drivers and trust architecture; InCommon Federation Proxies Report – what's next; Selling Federated concepts" — 米国 InCommon でのプロキシ運用報告と、Federation 採用の事業的動機の議論
  • "OpenID Fed and Discovery" — OP/RP ディスカバリーをトラストチェーン上でどう設計するかの議論

Day 2(4 月 3 日)

  • "OIDFed and Research Requirements" — 研究インフラ固有の要件(属性プロビジョニング、長寿命トークン、研究プロジェクト跨ぎの認可等)の Federation への落とし込み議論
  • "eduGAIN Futures" — eduGAIN コミュニティの将来戦略における Federation の位置付け議論
  • "REFEDS VC / eduID in wallets" — REFEDS Verifiable Credentials と eduID をウォレットに統合する方向性の議論

これらのセッションは R&E WG の公式アジェンダではないが、R&E WG 議長 Davide Vaghetti が所属する GARR を含む R&E 系ネットワーク事業者・各国 NREN の代表が参加する場で、R&E WG の長期成果物(R&E プロファイル・eduPerson 等のクレーム拡張・メタデータ拡張)と直接重なる論点が深く議論された月であったことを示している。

なお、TIIME 2025 では併行して REFEDS PORE(Profiling OpenID Federation for Research and Education)Working Group の活動が公開セッション化されており(refeds-pore-working-group-profiling-openid-federation-for-research-and-education はそのセッション ID)、R&E 向け OpenID Federation プロファイル策定の重心が REFEDS 側にも置かれていく流れがこの時点で具体化していた。

GÉANT CONNECT Online による TIIME 2025 振り返り記事(TIIME to connect、5 月 28 日公表)でも、TIIME 2025 が「eduID, wallets, credentials, how to support EU university alliances and student mobility, passkeys, and interoperability」の議論の場となったことが記されている。

OpenID Federation Interop Event(4 月 28〜30 日、Stockholm SUNET オフィス)

SUNET(スウェーデンの NREN)が会場ホストを務めた OpenID Federation の相互運用イベント。OIDF 公式告知(openid.net/openid-federation-interop-apr-28-30-2025)および Mike Jones による事後報告(self-issued.info/?p=2697)から、以下が確認できる。

  • 開催日: 2025 年 4 月 28 日(月)〜 30 日(水)、現地時間昼から最終日昼まで
  • 会場: SUNET オフィス(Tulegatan 11, Third Floor, 113 53 Stockholm)+ オンライン
  • 主催・ホスト: SUNET(Leif Johansson 中心)
  • 参加者: 30 名、15 か国(オーストラリア・ニュージーランドからも参加)
  • 実装数: 14 種類の OpenID Federation 実装が相互運用テストに供された
  • テスト範囲: Automatic / Explicit Registration プロファイル、Federation Wallet、メタデータ解決とポリシー、トラストマーク検証、複数トラストアンカートポロジー、トラストチェーン検証、リゾルバー、Historical Keys、エラーシナリオ、OpenID Federation Certification テスト群
  • OIDF 側オーガナイザー: Stephanie Meli、Gareth Narinesingh
  • 公開写真に映る主要参加者として Roland Hedberg(SUNET / 長年の OpenID 実装者)

本イベント自体は OpenID Federation WG(AB/Connect 配下の Federation 作業)のための場であり R&E WG の公式行事ではないが、会場ホストの SUNET は R&E セクターの中核 NREN であり、参加者には R&E 系 federation 実装者が多く含まれていた。R&E コミュニティが歴史的に Federation のインターオプを継続的に支えてきたこと(過去の NORDUnet 2017、SURFnet 2018、TNC/REFEDS 2019、Internet2/REFEDS 2019)の延長として、4 月の SUNET 開催はその系譜の最新事例にあたる。

Mike Jones の事後報告によれば、本 Interop の結果として Federation 本体のオープン Issue が 40 件から 17 件に縮減 され、その後 5 月に draft 43 として Interop フィードバックを反映した版が公開された。R&E WG が依拠する基盤仕様の成熟が R&E セクター主催の場で進められたという意味で、4 月 28〜30 日の Stockholm は R&E コミュニティにとっても重要なマイルストーンであった。

OIDF Hybrid Workshop(4 月 7 日、Google Sunnyvale)と IIW XL(4 月 8〜10 日)

Spring 2025 IIW(第 40 回)直前の 4 月 7 日に、OIDF Hybrid Workshop が Google Sunnyvale で開催された(12:30〜16:00 PST、ハイブリッド形式)。事前告知のアジェンダ概要は「2025 年の OIDF 戦略アップデート」「WG アップデート」「新興デジタル ID トレンド議論」の 3 本柱で、R&E WG 単独の登壇枠は公開告知からは特定できない。IIW XL は 4 月 8〜10 日に Computer History Museum(Mountain View)でアンカンファレンス形式で開催されたが、当日生成されるアジェンダの性質上、R&E 関連の個別セッション開催の有無は公開記録からは確認できない。

R&E WG の議長 Davide Vaghetti(GARR)による 4 月の OIDF Workshop / IIW での登壇記録は、公開資料からは確認できなかった。


4. メーリングリストの主要スレッド

openid-specs-rande ML(アーカイブ)の 2025 年 4 月のスレッド数: 0 件

公開アーカイブの親インデックスを確認すると、2025 年に入って最初に出現する週は Week-of-Mon-20250609(2025 年 6 月 9 日週)で、2024 年 10 月以降 2025 年 6 月までの全週インデックス(4 月相当の Week-of-Mon-20250331 / 20250407 / 20250414 / 20250421 / 20250428 を含む)はいずれも HTTP 404 で生成されておらず、ML への公開投稿ゼロが事実として確認できる。openid-specs-rande は週次インデックスのみ提供されるリストで、月次形式(2025-April/)の URL は元から存在しない。

R&E WG メンバー間の議論は、非公開の WG 定例コール、REFEDS Slack、GÉANT 内部 ML、TIIME 2025 などの対面イベント等で進行していたと見られるが、外部からは追跡できない。

参考として、隣接コミュニティの REFEDS OIDCre メーリングリストoidcre@lists.refeds.org、Sympa アーカイブ)も購読者限定公開のため、4 月の投稿状況を公開情報から再構成することはできなかった。REFEDS 側の wiki(wiki.refeds.org/display/GROUPS/OIDCre)は 2018 年 12 月で更新が止まったままで、4 月時点の活動状況を wiki から追跡することもできない。


5. GitHub 上の議論

R&E WG の OIDF 公式 GitHub リポジトリは存在しない。openid.net/wg/rande/ にも公開リポジトリへの参照はない。

R&E 領域の隣接コミュニティ(GÉANT / REFEDS)が維持する公開リポジトリの 2025 年 4 月の活動について、以下を確認した。

  • GEANT/edugain-openidfed: eduGAIN における OpenID Federation トラストモデル文書群。2025 年 4 月の新規コミット・PR・Issue は確認できなかった。同リポジトリは 2025 年 3 月初頭の Merge PR を最後にストール状態が継続している
  • refeds-oidcre/eduperson-jwt-claims: eduPerson / SCHAC 属性を JWT クレームとして伝達するためのドラフト仕様。2025 年 4 月の新規アクティビティなし。最新コミットは 2016 年 1 月で長期休眠
  • surfnet-niels/refeds-oidcre-saml-oidc-mapping: SAML 2.0 と OIDC の属性・識別子マッピングを記述するドラフト。2025 年 4 月の新規アクティビティなし。最新コミットは 2017 年 9 月で長期休眠

これらは厳密には R&E WG の成果物ではなく、隣接コミュニティが個別に維持しているリポジトリだが、R&E 実装者が参照する周辺資産として継続観測の対象になる。2025 年 4 月時点で R&E 関連の公開 GitHub アウトプットは新規生成されていない。

R&E WG が依拠する OpenID Federation 本体のリポジトリopenid/federation)については、SUNET Interop の事前準備フェーズとして 4 月中に複数の Issue 整理・PR レビューが進行していたが、これらは Federation WG(AB/Connect 配下)の活動範囲であり R&E WG の議論ではない。詳細は同月の Connect WG 月次レポートで扱う範囲となる。


6. 関連イベント

TIIME Unconference 2025(4 月 1〜3 日、英国 Reading)

R&E アイデンティティコミュニティの主要アンカンファレンス。前日 3 月 31 日には 20th FIM4R Workshop が併催された。OpenID Federation 関連のブレイクアウトを多数開催し、R&E WG の関心領域に直接重なる議論が行われた(§3 参照)。

OIDF Hybrid Workshop(4 月 7 日、Google Sunnyvale + オンライン)

Spring 2025 IIW 直前の OIDF 公式ワークショップ。OIDF 戦略アップデート、WG アップデート、デジタル ID トレンド議論。R&E WG 単独枠は告知からは確認できず。

IIW XL(第 40 回 Internet Identity Workshop、4 月 8〜10 日、Computer History Museum)

OpenID Foundation コミュニティが定例的に集うアンカンファレンス。4 月 8〜10 日に Computer History Museum(Mountain View)で開催。アジェンダは当日生成される性質上、R&E 関連個別セッションの公開記録は限定的。

OpenID Federation Interop Event(4 月 28〜30 日、Stockholm SUNET)

R&E セクターの中核 NREN である SUNET が会場ホスト。30 名、15 か国、14 実装の相互運用テスト。Federation 本体の Issue が 40 → 17 件に縮減(§3 参照)。R&E コミュニティが Federation の成熟を主催規模で支えた事例。


7. 今後の予定(2025 年 4 月末時点の視点)

公開情報からは R&E WG 単独の 5 月以降の明示的な予定は確認できなかった。観測可能な範囲で 4 月末時点で進行が見えていた近接予定:

  • OpenID Federation draft 43 公開(5 月初頭): SUNET Interop での 23 件分の Issue 解決を反映した版が直後に公開予定。R&E が採用基盤とする仕様の改善動向として注視
  • REFEDS PORE Working Group の本格始動: TIIME 2025 で公開セッション化された活動の継続。R&E 向け OpenID Federation プロファイル策定が R&E 内に重心を持つ流れ
  • EIC 2025(5 月 6〜9 日、ベルリン): KuppingerCole 主催の業界大規模イベント。R&E セクター固有セッションは伝統的に少ないが、Federation 採用の業界文脈を追う場として注目
  • R&E WG 自身のドラフト整備: OIDF 配下の公式仕様は引き続き「None yet.」のまま。対外可視性の改善が課題として残る
  • eduGAIN による OpenID Federation 採用検討: GN5-2 WP5 配下で内部準備が継続しており、後の 6 月 18 日 Infoshare に向けたパイロット設計の固め時期にあたる(外部公開は 6 月以降)

4 月末時点の R&E WG(OIDF 配下の公式 WG として)の対外可視性は、TIIME 2025 と SUNET Interop という 2 つの大きな R&E コミュニティイベントを月内に擁しながらも、R&E WG 単体としては公式 ML・公式 GitHub・公式ドラフトのいずれにも新規アウトプットを残さなかった月であった。R&E 仕様策定の実体作業が OIDF 配下から REFEDS / GÉANT 配下へ重心を移していく構造的な変化が、この月の活動分布から読み取れる。


8. 参考情報源