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OpenID Foundation MODRNA WG 活動レポート (2025年4月)

執筆日: 2026-05-18(遡及執筆)。本記事は 2025 年 4 月の MODRNA WG 活動を、約 1 年後の視点から openid-specs-mobile-profile メーリングリストの公開アーカイブと openid.net 上の公開情報をもとに再構成したものです。

1. 概要

MODRNA (Mobile Operator Discovery, Registration, & autheNticAtion) WG は、モバイルネットワークオペレータ (MNO) が OpenID Connect / OAuth 2.0 をベースにアイデンティティサービスを提供する際の相互運用プロファイルを策定する OpenID Foundation のワーキンググループである。共同議長は Bjorn Hjelm と John Bradley (Yubico) の 2 名で、定例コールは「Tuesday 2pm UTC (7am PDT / 4pm CEST) – biweekly」のカデンスで GoToMeeting 上で開催される運用となっている。仕様ソースは bitbucket.org/openid/mobile/src/master/ で歴史的に管理されており、議事録は non-public 運用である。

2025 年 4 月の MODRNA WG は、openid-specs-mobile-profile 公開アーカイブで確認できる範囲では極めて静かな月であった。4 月の隔週火曜日コール候補日は 4 月 8 日と 4 月 22 日の 2 回だが、4 月 8 日のコールは IIW (Internet Identity Workshop) Spring 2025 への参加者集中を背景に事前にキャンセルが告知され、4 月 22 日のコールについては開催・キャンセルいずれの公開告知も ML に投稿されていない。月内の ML 投稿はキャンセル通知 2 件(リマインダ本文 + Google カレンダー連動の自動キャンセル通知)と、4 月 23 日に Brian Campbell が openid-specs-fapi 側から openid-specs-mobile-profile にもクロスポストした FAPI 1.0 Advanced errata 公開アナウンスへの返信 1 件、合計 3 件のみであった。openid.net/tag/modrna/ 配下にも 2025 年 4 月付の MODRNA 固有アナウンスは存在しない。

本月は、4 月 8 日コールキャンセル以降 6 月 3 日コールまで続く長期サイレント期間(約 6 週間、5 月分の週次アーカイブはインデックス自体が生成されていない)の入口にあたる月であり、MODRNA WG の対外可視性は構造的に低下していた時期と整理できる。

2. 公開された仕様・ドラフト改訂

2025 年 4 月中に openid.net/specs/ 配下で新規に公開された MODRNA 仕様ドラフトは確認できなかった。MODRNA WG が保守する主要仕様群のステータスは、4 月末時点で以下のとおりであり、これは 3 月末・5 月末時点と同一である。

仕様ステータス
OpenID Connect Client Initiated Backchannel Authentication – CoreFinal (2021-09)
OpenID Connect MODRNA Authentication ProfileImplementer's Draft 1
OpenID Connect Account PortingImplementer's Draft 1
OpenID Connect User Questioning APIImplementer's Draft 2
OpenID Connect MODRNA Discovery ProfileWorking Draft
OpenID Connect MODRNA Registration ProfileWorking Draft
Client Initiated Backchannel Authentication Profile (MODRNA 版)Working Draft

本月、MODRNA WG として新規のパブリックレビュー告知・Notice of Vote・Implementer's Draft 改訂アナウンスは発出されていない。一方、4 月 23 日に openid-specs-fapi 側で進行していた FAPI 1.0 Advanced errata(draft 10)の openid.net/specs/ 公開作業に伴い、CIBA Core のエラータ版 (openid-client-initiated-backchannel-authentication-core-1_0-06.html) が連動して openid.net 上に掲載される旨が周知された(詳細は §4 参照)。MODRNA WG が直接編集主体となるドラフト改訂ではないが、CIBA Core Final 仕様の対外公開バージョンが errata 反映版に切り替わる動きとして MODRNA 領域に関連する月内イベントである。

3. ミーティングと議論

MODRNA WG の議事録は non-public 運用のため、定例コールの議題・参加者・決定事項は公開されていない。4 月の隔週火曜日サイクルから推定される定例コール候補日と公開記録は以下のとおり。

日付コール公開記録
2025-04-08 (火)定例開催前にキャンセル告知(Bjorn Hjelm より ML へ 2 件投稿、後述)
2025-04-22 (火)定例ML 上に開催・キャンセル通知なし

4 月 8 日コール: IIW Spring 2025 と重なりキャンセル

4 月 8 日 13:29 UTC、共同議長の Bjorn Hjelm から「REMINDER - MODRNA WG Call Canceled」と題したリマインダが ML に投稿された。本文は短く、以下の 1 文に加えて IIW 参加者への一言が添えられている。

As discussed previously, this is a reminder that the MODRNA WG call today, Apr. 8, has been canceled. (Bjorn Hjelm, 2025-04-08 投稿 より要約)

「As discussed previously」とあることから、キャンセル自体は事前に WG 内で合意済みであったことがわかる。続けて Hjelm は IIW 出席者に "have a good week" と声をかけており、キャンセルの実質的な理由が同週 4 月 8 日〜10 日にマウンテンビューで開催された IIW XL (Spring 2025) との衝突にあったことが読み取れる。MODRNA WG の常連メンバーには IIW の中核参加者が含まれており、IIW 開催週の定例コールをキャンセルする運用は MODRNA WG として例年的な対応である。

直後の 13:30 UTC には、Google カレンダー連動の自動配信メール「Canceled event: MODRNA WG @ Tue Apr 8, 2025 7am - 8am (PDT)」が同 ML に流れた(差出人は Bjorn Hjelm の Gmail アドレス)。招待先には Cisco、T-Mobile、Deutsche Telekom 等の MNO・ベンダー所属メンバーが含まれていることがメッセージから読み取れ、MODRNA WG の参加者構成が継続して MNO エコシステム中心であることを再確認できる。

4 月 22 日コール: 公開記録なし

隔週カデンスに従えば次回コールは 4 月 22 日(火)に該当する。Week-of-Mon-20250421 の週次アーカイブには Brian Campbell による FAPI errata クロスポスト 1 件のみが記録されており、MODRNA WG として 4 月 22 日コールに関する事前アジェンダ投稿・キャンセル通知・事後の議事連絡はいずれも投稿されていない。MODRNA WG では 4 月 8 日コールのように Hjelm がキャンセル時に明示的なリマインダを ML に流す運用が観察されているため、(1) 開催されたが議事録 non-public のため公開記録に現れていない、(2) 4 月 8 日キャンセルからの実質休止が継続していた、のいずれかと推察されるが、公開情報からは確定できない。

公開議論の状況

議事録 non-public の MODRNA WG では、本来 ML や Bitbucket Issue から議論を再構成するのが代替手段となる。4 月は ML 上に MODRNA WG 固有の技術提案・設計議論・Issue 起票通知が一切投稿されておらず、本節で実質的な技術討議を再構成できる材料はない。4 月 8 日コールのキャンセル運用と、4 月 23 日に流れた FAPI errata クロスポスト(§4)が、本月に MODRNA WG 領域で観察できる公開議論のすべてである。

4. メーリングリストの主要スレッド

2025 年 4 月の openid-specs-mobile-profile の週次アーカイブ生成状況と投稿内訳は以下のとおり。

アーカイブ週投稿数主な内容
Week-of-Mon-202503310週次インデックスなし(4 月 1 日〜6 日に投稿ゼロ)
Week-of-Mon-2025040724 月 8 日コールキャンセル通知 2 件
Week-of-Mon-202504140週次インデックスなし(4 月 14 日〜20 日に投稿ゼロ)
Week-of-Mon-202504211FAPI 1.0 Advanced errata クロスポストへの Brian Campbell 返信
Week-of-Mon-202504280週次インデックスなし(4 月 28 日〜30 日に投稿ゼロ)

技術議論を含むスレッドとして取り上げられる候補は実質 1 本のみであり、§5 で求められる 3〜5 本選定の基準を満たすスレッドは存在しない。以下、月内全 3 投稿の概要をまとめる。

スレッド 1: REMINDER - MODRNA WG Call Canceled (2025-04-08)

  • 開始: 2025-04-08 13:29 UTC、Bjorn Hjelm より
  • URL: Week-of-Mon-20250407/001984.html
  • 内容: 当日(4 月 8 日)の MODRNA WG コールを事前合意のもとキャンセルする旨と、IIW Spring 2025 参加者への一言。
  • 返信: なし。スレッドは 1 通で終了。
  • 続報: 13:30 UTC に Google カレンダー連動の自動キャンセル通知「Canceled event: MODRNA WG @ Tue Apr 8, 2025 7am - 8am (PDT)」(001985.html)が同議長から続けて配信された。

スレッド 2: [Openid-specs-fapi] Publishing FAPI 1.0 advanced errata set to openid.net/specs/ (2025-04-23)

  • 開始: 2025-04-23 12:29 UTC、Brian Campbell (Ping Identity) より
  • URL: Week-of-Mon-20250421/001986.html
  • 発端: openid-specs-fapi 側で Mike Jones が FAPI 1.0 Advanced errata(draft 10)を openid.net/specs/ 配下に公開することを提案したスレッドに対する Brian Campbell の応答。MODRNA ML には openid-specs-fapi との Cc クロスポストとして流入した。
  • Campbell の論点: errata として公開される予定の差分が実質的に破壊的変更を含む可能性を指摘し、errata 表記のまま substantive change を含めること、および差分の所在が読者に十分示されないままドキュメント全体を再フォーマットすることの妥当性を問題提起した。

I do think it's problematic to publish what are effectively breaking changes as errata. With little to no indication that there are substantive changes or even what they are. (Brian Campbell, 2025-04-23 投稿 より)

  • MODRNA WG との接点: 同スレッドで言及される連動 errata に CIBA Core 1.0 errata 版(openid-client-initiated-backchannel-authentication-core-1_0-06.html)が含まれており、MODRNA WG 主管の Final 仕様の対外公開バージョンが errata 反映版に切り替わる動きとして MODRNA ML にも周知された形である。MODRNA WG メンバーからの返信は MODRNA ML 側には投稿されておらず、議論は openid-specs-fapi 側のスレッドで継続した。
  • 共有 URL(メッセージ内): FAPI 1.0 Advanced errata 提案版 (openid.bitbucket.io/fapi/openid-financial-api-part-2-1_0.html)、OpenID Connect Core errata (openid-connect-core-1_0-36.html)、CIBA Core errata (openid-client-initiated-backchannel-authentication-core-1_0-06.html)、FAPI ソース (bitbucket.org/openid/fapi/raw/.../openid-financial-api-part-2-1_0.md)。

その他

上記 2 スレッド以外の投稿は存在しない。MODRNA WG メンバーから 4 月中に投稿された ML エントリは Bjorn Hjelm のキャンセル通知 2 件のみで、他のメンバー由来の MODRNA 固有スレッドは皆無であった。

5. GitHub 上の議論

MODRNA WG の仕様ソースは GitHub ではなく Bitbucket Cloud (bitbucket.org/openid/mobile/src/master/) で管理されている。GitHub 側に MODRNA の公式一次リポジトリは存在しない(github.com/openid/MODRNA といった誤記が一部で見られるが、そのようなリポジトリは現存しない)。

Bitbucket Cloud は SPA 描画のため外部からのクローリングに適さず、本稿の調査範囲では 4 月中の Bitbucket Issue / PR / コミット活動の具体的件数を確認できなかった。直後の 6 月 3 日コールで Bjorn Hjelm が ML に流すことになる Issue #215 (Android Carrier OpenID API) のクローズ提案、Issue #220 (Update MODRNA WG Overview page)、Issue #221 (Update MODRNA WG Spec page) について、これらの起票や下書きが 4 月中に Bitbucket 側で発生していたか否かは、外部からの可視性がないため判明していない。

なお、Atlassian は後に Bitbucket Cloud の Issues / Wiki 機能を 2026 年 8 月 20 日に完全廃止することを発表することになるが、2025 年 4 月時点ではその正式アナウンス前である。MODRNA WG として GitHub 移行や Issue Tracker 代替候補に関する具体的な検討が 4 月の公開チャネルで進行していた形跡は確認できない。

6. 関連イベント

IIW XL (Spring 2025) — 4 月 8 日〜10 日、マウンテンビュー

OpenID Foundation 関連コミュニティが集まる半年次のアンカンファレンス Internet Identity Workshop の第 40 回が、4 月 8 日(火)〜10 日(木)に米国カリフォルニア州マウンテンビューの Computer History Museum で開催された。MODRNA WG の 4 月 8 日コールキャンセルは、本イベントとの参加者衝突を背景としている(Bjorn Hjelm のキャンセル通知本文にて "For those attending IIW, have a good week" の言及あり)。MODRNA WG メンバーによる IIW セッション登壇については、IIW のセッション記録 (Book of Proceedings) が後日公開される形式であり、本月時点では MODRNA 固有セッションの開催有無は公開情報からは確定できない。

European Identity and Cloud Conference (EIC 2025) の直前期

5 月 6 日〜9 日にドイツ Berlin で開催される予定の EIC 2025 の直前月にあたる。MODRNA WG として EIC 2025 で MODRNA 固有のセッションを設けるアナウンスは 4 月中の openid.net 上には掲載されておらず、本月内に MODRNA として EIC 関連の対外発信は確認できなかった。

CAMARA / Mobile Connect コンテキスト

OpenID Foundation は 2023 年 11 月に Linux Foundation の CAMARA プロジェクトに Associate Member として参加しており、CAMARA の Identity & Consent WG では FAPI / CIBA を含む OpenID 仕様の MNO API 適用が継続的に議論されている。Bjorn Hjelm は OIDF の CAMARA Liaison Officer も兼務しているが、4 月中に MODRNA WG として CAMARA 進捗を ML に共有する投稿や、MODRNA × CAMARA の合同セッションを開いた記録は公開情報からは確認できなかった。

7. 今後の予定 (2025 年 4 月末時点の視点)

4 月末時点の公開情報からは、MODRNA WG の 5 月以降の明示的な予定は確認できなかった。隔週カデンスから推定される事項としては以下が挙げられる。

  • 定例コール: 隔週火曜サイクルから 5 月 6 日(火)・5 月 20 日(火)が次回候補。ただし 5 月 6 日週は EIC 2025(5/6〜9, Berlin)と重なるため、MODRNA WG 内で開催判断が分かれる可能性
  • CIBA Core errata 版の openid.net 公開: 4 月 23 日に openid-specs-fapi 経由で周知された errata 版(openid-client-initiated-backchannel-authentication-core-1_0-06.html)の正式掲載が 5 月以降に進む見込み
  • Implementer's Draft 群の現状維持: Authentication Profile ID1 / Account Porting ID1 / User Questioning API ID2 はいずれも次版改訂の公式アナウンスがなく、4 月末時点では現行ステータスを維持
  • Bitbucket 側の Issue / PR 動向: 外部から可視性のない Bitbucket Issue Tracker 上で MODRNA 固有の議題が継続している可能性はあるが、4 月末時点で公開チャネルから確認する手段はない

4 月の対外可視な活動は IIW 衝突によるコールキャンセル運用と FAPI errata 周知への接続程度に留まり、当時の読者にとっては「MODRNA WG が IIW 期間とその前後で一時的に沈黙する月」として受け止められる内容であった。後の月で振り返ると、本月は 4 月 8 日キャンセル以降 6 月 3 日コールまで続く約 6 週間の長期サイレント期間の入口にあたる。

8. 参考情報源