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OpenID Foundation eKYC-IDA WG 活動レポート (2025年9月)

執筆日: 2026-04-25(遡及執筆)

1. 概要

eKYC & Identity Assurance Working Group(以下「eKYC-IDA WG」)は、本人確認済みクレーム(verified claims)と検証プロセスに関する情報を OpenID Connect 上で伝達する仕組みを標準化する OpenID Foundation の WG である。中核仕様は OpenID Connect for Identity Assurance 1.0 (OIDC4IDA)OpenID Identity Assurance Schema Definition 1.0OpenID Connect for Identity Assurance Claims Registration 1.0 の3本で、いずれも Final Specification。共同議長は Mark Haine(Considrd Consulting)、Naohiro Fujie、Hodari McClain の3名で、毎週水曜 UTC 15:00 に定例コールを実施する。

2025年9月の eKYC-IDA WG は、Final 化済み OIDC4IDA への errata 取り込み準備 と、Authority(権限/委任)拡張のユースケース整理 を中心に進行した、ML 投稿4通の比較的静かな月であった。ML 投稿の内訳は (1) 9月3日に Mark Haine が共有した Conformance test tool デモ録画、(2) 9月17日定例コールの詳細アジェンダ、(3) 9月24日コールのキャンセル通知(議長メール+Google Calendar 自動通知の2通)。アジェンダメールに含まれた12項目超の Issue/PR 番号から、9月の WG が「Conformance & Certification / Authority / IDA Errata / Profiles & Registries の4軸で実質的な議論を進めていた」ことが把握できる。

eKYC-IDA WG の正式リポジトリは bitbucket.org/openid/ekyc-ida であり、GitHub 上の openid/ekyc-ida存在しない(HTTP 404)。Bitbucket Cloud の Issues / Wiki は SPA で生成されるため WebFetch では本文取得ができないという構造的制約があり、本稿は ML(pipermail 公開アーカイブ)の記述を一次情報の中核に据えて再構成 している。

2. 公開された仕様・ドラフト改訂

9月中に Final / Implementer's Draft / 公開投票通知のいずれも発行されていない。中核仕様 OpenID Connect for Identity Assurance 1.0 (OIDC4IDA) は2024年10月1日に Final Specification として OpenID Foundation により公開済みで、Schema Definition 1.0 / Claims Registration 1.0 と合わせて3本の Final 仕様体系が確立された後の段階にある。Final 後の議論は errata 取り込み版(後の Draft 17)の準備と、Authority 拡張という新しい仕様化スコープの整理 に向かっていた。

9月17日アジェンダから読み取れる、当月の作業対象 PR・Issue は次のとおり(番号は Bitbucket 上のもの):

Conformance & Certification

  • Issue #1437(Edmund 担当): Final 形式の Conformance profile を策定する
  • Issue #1469: eKYC & IDA の negative tests(不正パターンを検出するテストケース)整備
  • 9月3日には Edmund が登壇したコンフォーマンステストツールのデモ録画が ML に共有された(録画は OIDF Zoom クラウド経由で限定共有)

Authority(権限・委任)

  • Issue #1473: Authority / Delegation / Relationship に関するユースケースリストの作成
  • Issue #1470: 法人と自然人の関係性をどう扱うか
  • Issue #1471: 法人向けクレーム一覧が大きすぎる問題(後の PR #264 で削減対応)
  • Issue #1472: AI エージェント が委任を受けるエンティティとなる場合、どう記述するか
  • Issue #1429: Authority — モバイルキャリアの潜在ユースケース
  • Issue #1441: Authority — GLEIF の "Official Organizational Roles (OOR) Code List" の取り込み
  • PR #243(Naohiro Fujie 担当): 日本の GbizID に対するレスポンス例を追加

Identity Assurance — Errata

  • Issue #1454: check_details の内容明確化(後の PR #265 で対応)
  • Issue #1474: eKYC-IDA / Schema に対する ISO 改訂リクエスト(プレースホルダー)
  • Issue #1476: IDA 仕様内の規範的参照(normative references)が最新日付を指していない(後の PR #263 で対応)

Profiles & Registries

  • Issue #1475(Mark Haine 担当): スキーマ定義とプロファイリングのスコープ整理
  • Issue #1339(Mark Haine 担当): OIDC4IDA 仕様のプロファイル群の作成
  • Pending: UK 政府との対話
  • Pending: NCCOE / NIST との対話
  • Issue #1392: 冗長な識別子の整理
  • Issue #1390: document_type がどこにも定義されていない問題

これらは10月以降も継続課題となり、Issue #1471 / #1454 / #1476 は10月中に PR #264 / #265 / #263 として errata 取り込み版に反映されていく(10月レポート参照)。

3. ミーティングと議論

eKYC-IDA WG は毎週水曜 UTC 15:00(米東部時間 11:00、米西部時間 8:00)に定例コールを実施する。ただし議事録は non-public(公開ポリシー対象外)であるため、本節は ML 上のアジェンダ・キャンセル通知から再構成している。

日付 (2025年)ステータスML 上の根拠
9月3日(水)アジェンダ未公開コール開催可否は記録から判定不能。同日に Mark Haine が Conformance test tool 録画を共有
9月10日(水)ML 上に記録なしアジェンダ・キャンセル通知のいずれも投稿されておらず、開催可否は外部から確認できない(pipermail の Sep 8〜14 週はインデックス自体が存在しない)
9月17日(水)開催(アジェンダ公開)Mark Haine が当日13:41 UTC にアジェンダを ML 配信(000969
9月24日(水)キャンセル(共同議長不在)Mark Haine が10:37 UTC に「The co-chairs are not available to host the call」と通告(000970)、続いて Mike Leszcz(OIDF スタッフ)が11:44 UTC に Google Calendar の自動キャンセル通知を中継(000971

9月17日定例コール(推定)

ML 上には議事録自体は投稿されていないが、Mark Haine が同日13:41 UTC(コール開始 15:00 UTC の約75分前)に投稿した詳細アジェンダから、当日扱われた可能性が高い議題は §2 の Issue/PR リストとほぼ一致する。アジェンダは「Conformance & Certification → Authority → Identity Assurance Errata → Profiles & Registries」の4セクションに加え、末尾に Implementer Clinic(実装者向けオープン Q&A) の枠が設けられていた点が特徴的で、Final 化後の WG が「実装者の質問に応える場」を組み込み始めている運営姿勢が見て取れる。

AI エージェントへの委任」(Issue #1472)と「モバイルキャリアの Authority ユースケース」(Issue #1429)は、9月時点で eKYC-IDA WG が技術論を超えた応用領域に踏み込みつつあったことを示す題目で、AI エージェント論点は同時期の AIIM CG / DCP WG / IPSIE WG とも共通する横断的テーマとなっていた。

9月24日コールキャンセル

Mark Haine の通告メールは2文と短く、理由は「共同議長3名の同時不在」のみが述べられた。We expect to be back to meetings next week on Wednesday 1st October.(議事録非公開のため ML 抜粋)と、翌週10月1日からの定例再開を予告した。Mike Leszcz(OIDF スタッフ)からは Google Calendar の Canceled event with note 形式の自動メールが ML にミラーされ、招待者全員(OIDF 配下の主要 WG メンバー含む)に届いた点で、WG の参加者規模を間接的に示す手がかりとなる。

9月3日 / 9月10日について

9月3日の Conformance test tool 録画共有(000968)は Edmund によるデモ動画 であり、本文には Zoom の録画 URL とパスコードのみが含まれた。デモ自体は8月以前に行われていたものの再共有とみられるが、ML 上で改めて録画リンクが配布されたのは「Final 化済み OIDC4IDA に対する Conformance テストツールの存在を実装者層に再周知する」意図と読める。

9月10日週は ML 投稿ゼロ(pipermail に Sep 8〜14 のインデックス自体が存在しない)。コール開催の有無を外部記録から判定することはできない。

4. メーリングリストの主要スレッド

openid-specs-ekyc-ida ML(アーカイブ)は週次インデックス形式。2025年9月の投稿は 4通(うち2通は実質同じイベント — 9月24日キャンセル通知)。

4.1 OpenID Connect for IDA Conformance test tool — 2025年9月3日(Mark Haine)

A recording has been located of Edmund showing the recently deployed OpenID Connect for IDA Conformance test tool.

Edmund がデモした OpenID Connect for IDA Conformance テストツールの録画 URL を ML 全体に共有。技術的議論は本文に含まれていないが、「最近デプロイされた」 という記述から、9月時点で OIDC4IDA Final 仕様(2024年10月公開)に対する Conformance テストツールが OpenID Foundation Certification プログラムの一環として稼働段階に入っていたことが読み取れる。これは Issue #1437(Final 形式 Conformance profile の策定)の作業を実装面で支える基盤となる。

4.2 eKYC and IDA WG Agenda 17-09-2025 — 2025年9月17日(Mark Haine)

9月17日定例コールの詳細アジェンダ。§2 / §3 で詳述したとおり、12 個超の Bitbucket Issue / PR 番号(#1437, #1469, #1473, #1470, #1471, #1472, #1429, #1441, PR #243, #1454, #1474, #1476, #1475, #1339, #1392, #1390)と、UK Gov / NCCOE-NIST との対話を網羅した、9月の eKYC-IDA WG 活動を理解する上で最も情報量が多い投稿。

4.3 eKYC and IDA WG 24-09-2025 — 2025年9月24日(Mark Haine)

9月24日コールのキャンセル通知。The co-chairs are not available to host the call. We expect to be back to meetings next week on Wednesday 1st October. の2文構成。技術論は無いが、共同議長3名(Mark Haine / Naohiro Fujie / Hodari McClain)が同時に不在で WG が止まる構造であることを示す事実情報として記録に値する。

4.4 Canceled event with note: eKYC-IDA WG Call @ Wed Sep 24, 2025 11am - 12pm (EDT) — 2025年9月24日(Mike Leszcz)

OIDF スタッフ Mike Leszcz による Google Calendar 自動キャンセル通知の ML 中継。9月24日の WG コール枠(米東部時間 11:00 - 12:00)が Calendar 上でキャンセル状態となったことを正式に通知した。共同議長メールに続く形で2重に告知することで、Calendar 招待ベースで参加していた実装者・観察者層にも欠席が確実に伝達される運用となっている。

5. GitHub 上の議論

eKYC-IDA WG は GitHub 上にリポジトリを保有していないgithub.com/openid/ekyc-ida は HTTP 404 を返す(2026年4月時点でも未作成)。eKYC-IDA WG の正式リポジトリは bitbucket.org/openid/ekyc-ida であり、Issue / PR 議論はそちらで行われている。

ただし Bitbucket Cloud は SPA(JavaScript レンダリング)で HTML を生成するため、WebFetch 経由では Issue / Wiki / Pull Request の本文を取得できない。本稿では §2・§3・§4 で示したとおり、ML 上のアジェンダメール(000969)に列挙された Issue / PR 番号と短い説明文 を一次情報として再構成し、Bitbucket 直接アクセスを伴わない範囲で WG の議論内容を表現している。

なお、Atlassian は2026年8月20日に Bitbucket Cloud Issues / Wiki の完全削除を予定しており、OpenID 配下の Bitbucket 依存 WG(eKYC-IDA / FAPI / iGov / MODRNA)は2026年中に GitHub 等への移行が必要となる見込み。9月時点ではこの告知は未だなされていない(告知は2026年3月の Atlassian 通知が起点)。

6. 関連イベント

9月17日アジェンダの末尾には、共同議長から WG メンバーに向けた Q4 イベントの参加見込み一覧 が共有されていた(出典: アジェンダメール):

日程 (2025年)イベント場所
10月13〜16日FIDO AuthenticateCarlsbad, CA
10月20日OIDF events / DCP WG hybrid meetingSan Jose, CA
10月21〜23日IIW Fall 2025 (IIW 41)Mountain View, Computer History Museum
11月1〜7日IETF 124Montreal

Q4 のイベント密度の高さから、9月後半の WG 活動が「10月のイベント前にどこまで議論を進めておくか」という意識下で動いていたことが読み取れる。9月24日のキャンセルが連続せず10月1日に再開予定としてアナウンスされたのも、10月13日からの FIDO Authenticate を起点に立て続けに来る対面イベントの準備タイムラインを意識した動きだったと推測される。

7. 今後の予定(2025年9月末時点の視点)

9月末時点で eKYC-IDA WG が見据えていた当面の予定:

  • 10月1日(水): 9月24日キャンセルを受けた定例コール再開予定
  • 10月8日 / 15日 / 22日 / 29日(水): 通常の毎週コール(10月22日は IIW 41 期間中の扱い、10月29日は IIW 直後の扱いが論点)
  • errata 取り込み準備: Issue #1454 / #1471 / #1476 を中心に、Final 1.0 仕様への errata set 1 取り込み版(後の Draft 17)の PR 化が継続課題
  • Authority 拡張のユースケース整理: Issue #1473 を起点に、AI エージェント(#1472)・モバイルキャリア(#1429)・GLEIF OOR(#1441)など複数の応用シナリオを統合する作業
  • UK Gov / NCCOE-NIST との対話: Profiles & Registries 軸でのペンディング項目。両者からの正式な回答を待つフェーズ
  • Conformance テストツールの実装者層への展開: 9月3日の録画共有を起点に、Final 形式 Conformance profile(Issue #1437)への入力を集める段階

なお、Naohiro Fujie が9月時点で進めていた PR #243(日本の GbizID レスポンス例)は、日本のデジタル庁関連プロジェクトとの整合を取りながらの継続作業として10月以降の Authority 拡張議論に連なる。

8. 参考情報源