OpenID Foundation Australian Digital Trust CG 活動レポート (2025年12月)
執筆日: 2026-04-20(遡及執筆)
1. 概要
Australian Digital Trust Community Group(ADT CG)は、オーストラリアにおけるデジタルアイデンティティの普及と相互運用性の向上を目的として、OpenID Foundation 傘下で活動するコミュニティグループである。チェアは Dima Postnikov、Victoria Richardson、Dave Hyland、Brad Carr、Olaf Grewe の5名が務める。
2025年12月は定例 CG ミーティングを2回(12月1日・12月15日)、SIDI Trust Framework Analysis サブグループのミーティングを1回(12月8日)開催した。これが年内最後のミーティング月となり、次回定例は2026年1月12日と予告された。
主な活動トピックは、OIDF メンバー投票(OpenID4VC HAIP 1.0・Authorization API 1.0)への参加促進、オーストラリアのソーシャルメディア年齢制限立法に関連した年齢確認(Age Assurance)政策議論、ゼロ知識証明・選択的開示に関する技術発表、そして SIDI Trust Framework Analysis サブグループによる日本デジタルアイデンティティ標準へのフレームワーク比較作業であった。
2. 公開された仕様・ドラフト改訂
12月中に ADT CG 自身が発行・改訂した仕様ドラフトは確認されなかった。ただし、CG が注目した OIDF 全体の投票案件として以下の2件が議題に上がった。
- OpenID4VC High Assurance Interoperability Profile (HAIP) 1.0: パブリックレビュー期間は12月8日まで。12月9日に投票開始。
- Authorization API 1.0: パブリックレビュー期間は12月22日まで。12月23日に投票開始。
グループ参加者は両案件への投票(棄権含む)を繰り返し促された。
3. ミーティングと議論
12月1日(月)— ADT CG 定例ミーティング
- 参加者(10名): Jacob Oberman、John Scullen、Hemang、Derek Munneke、Dima Postnikov、Victoria Richardson、Stefan Charsley、Toma、Jo Spencer、Andres Olave
OIDF 投票への参加確認
直前に開始または近く開始予定の2件の OIDF メンバー投票について報告があり、参加者全員に積極的な投票(棄権含む)が求められた。
年齢確認(Age Assurance)ブログ投稿
Victoria Richardson が、年齢確認の選択肢の多様性・データ最小化の原則・Age Assurance Czech との業界朝食会から得た知見をまとめたブログ投稿を執筆中であることが報告された。草稿は参加者と共有予定。
コミュニティフィードバック収集
CG の活動効果に関するメンバーからのフィードバックを収集する提案が行われ、収集方法(アンケート・投票など)について意見が交わされた。
前回アクションの進捗
- Innovation Day の日程がドゥードル投票の完了により2026年2月5日に確定した。
- 11月26日の IDPro Canberra ミートアップが予定どおり実施された。
- DSAC に関する Olaf の Board レポートがレビュー可能な状態になった。
次回: 12月15日(年内最終)、1月12日(2026年再開)
12月8日(月)— SIDI Trust Framework Analysis サブグループ
- 参加者(8名): Dave Hyland、Olaf Grewe、Jo Spencer、Jacob Oberman、Sushmita Ruj、Stefan Charsley、Andres Olave、Jon Dart
このサブグループは、オーストラリアのデジタルID フレームワーク(AGDIS)を国際的なトラストフレームワークと比較し、クロスボーダー相互運用性の基盤を整備することを目的としている。EU の eIDAS 2.0、NIST 800-63(米国)、UK DIATF、カナダ DIACC、シンガポール Singpass、スウェーデン BankID との比較を経て、12月時点では日本のデジタルアイデンティティ標準へのマッピングに取り組んでいた。
「意図」対「実装詳細」の区別
比較フレームワークの分析において、ある要件がフレームワークの「意図(intent)」を記述しているのか「実装上の詳細」を規定しているのかを区別することの重要性が議論された。この区別を適切に反映するためのスプレッドシートの整理方法について意見が交わされたが、具体的な結論は次回に持ち越された。
AGDIS と CDR の組み合わせによるデータポータビリティ要件
オーストラリアには AGDIS(Australian Government Digital Identity System)と CDR(Consumer Data Right)という2つの制度が並存している。これらを組み合わせると、事実上のデータポータビリティ要件として機能するのではないかという論点が浮上した。比較スプレッドシートにこの組み合わせを反映させる新しい行・値が必要かどうかが検討されたが、結論は持ち越しとなった。
次回: 2026年1月19日(月)
12月15日(月)— ADT CG 定例ミーティング(年内最終)
- 参加者(8名): Miki Brotzler、Linden Dawson、Jo Spencer、Jacob Oberman、Toma、Hemang、Derek Munneke、Stefan Charsley
OIDF 投票の進捗確認
12月1日と同様、OpenID4VC HAIP 1.0(投票中)と Authorization API 1.0(パブリックレビュー12月22日まで)の投票状況が改めて共有された。
ゼロ知識証明と選択的開示に関する技術発表
Jacob Oberman がゼロ知識証明(ZKP)と選択的開示の仕組みについて集中的な技術議論を主導した。議事録にはトピック名のみ記録されており、詳細な議論内容は残っていないが、これが年内最後のミーティングの技術的ハイライトとなった。
コミュニティフィードバックの継続議論
12月1日からの継続議題として、CG 活動の効果測定とフィードバック収集の方法論について議論が続いた。
年末年始の予定確認
年内最終ミーティングであることを確認。Innovation Day(2026年2月5日)のイベントリンクを Victoria が共有予定。
4. メーリングリストの主要スレッド
openid-au-digital-trust アーカイブ 2025年12月には3件のメッセージが投稿されたが、いずれも Dave Hyland によるミーティングアジェンダの配信であり、技術的な議論を含む複数返信スレッドは発生しなかった。
投稿されたメッセージ:
| 日付 | 件名 | 内容 |
|---|---|---|
| Nov 30(UTC) | ADT CG - Agenda | 12月1日定例の HackMD アジェンダリンク配信 |
| Dec 7(UTC) | ADT Trust Ecosystems CG | 12月8日サブグループの HackMD アジェンダリンク配信 |
| Dec 14(UTC) | ADT CG - Agenda | 12月15日定例の HackMD アジェンダリンク配信 |
ML は主に事前周知チャンネルとして機能しており、技術議論は HackMD の議事録と会議中のリアルタイム対話が中心となっている。
5. GitHub 上の議論
openid/cg-australian-digital-trust リポジトリを調査した結果、2025年12月中に作成されたイシュー・PR・コミットはいずれも確認できなかった。コミット履歴は11月から2026年1月9日(nextalias による PR #8・#9:2025-11-17 ファイルの .md 拡張子追加と README リンク修正)へと直接飛んでいる。
minutes/ ディレクトリの最終ファイルは 2025-11-17.md、TrustFrameworkAnalysis/minutes/ の最終ファイルは 2025-11-10.md であり、12月の議事録は GitHub には反映されなかった(HackMD のみで管理)。
6. 関連イベント
オーストラリアのソーシャルメディア年齢制限立法(12月10日施行)
12月10日に施行されたオーストラリアの SNS 年齢制限法について、ADT CG でも注目された。参加者からは「禁止ではなく、アカウント開設の遅延措置であり、ペナルティはプラットフォーム側に課される(個人・保護者ではない)」という理解が共有された。Victoria Richardson が取り組むADTの Age Assurance ブログ投稿の背景にも、この立法動向がある。
Innovation Day(2026年2月5日予定)
12月中に日程が確定した。詳細は Victoria Richardson がイベントリンクを共有予定。
IDPro Canberra Meetup(11月26日実施済み)
11月26日開催の IDPro Canberra ミートアップが12月1日のミーティングで完了報告された。
7. 今後の予定
2025年12月15日時点で予告されていた今後の予定:
- 2026年1月12日(月): ADT CG 定例ミーティング再開
- 2026年1月19日(月): SIDI Trust Framework Analysis サブグループ再開
- 2026年2月5日: Innovation Day(日程確定済み)
- Authorization API 1.0 投票: 2026年1月以降に結果が出る見込み(パブリックレビュー12月22日まで、投票開始12月23日)
8. 参考情報源
- openid-au-digital-trust ML アーカイブ 2025年12月 — アジェンダ配信のみ、技術スレッドなし
- ADT CG 定例ミーティング議事録 2025-12-01(HackMD) — 10名参加、OIDF 投票・Age Assurance・CG フィードバック
- SIDI Trust Framework Analysis サブグループ議事録 2025-12-08(HackMD) — 8名参加、日本標準との比較・AGDIS+CDR データポータビリティ論点
- ADT CG 定例ミーティング議事録 2025-12-15(HackMD) — 8名参加、ZKP/選択的開示技術発表・年内最終
- openid/cg-australian-digital-trust GitHub — 12月中のコミット・issue・PR なし
- ADT CG ページ(openid.net) — 静的情報ページ(12月のアナウンスなし)
- OIDF 比較スプレッドシート(Google Sheets) — SIDI Trust Framework Analysis サブグループ作業資料